昨年11月、東京・渋谷のduo MUSIC EXCHANGEにて『Emerge Fest. Japan』が開催された。イベント出演をきっかけとし、三軒茶屋にある台湾食堂「帆帆魯肉飯」で、日本のCody・Lee(李)と台湾のSorry Youthの対談インタビューを取材した。
Cody・Lee(李)は東京を拠点とし、日本のみならず、海外でも注目、支持されている5ピースバンドで、個性が鮮明なバンドサウンドが魅力。Sorry Youthは台湾語を駆使する3ピースバンドで、日本でも数多く音楽フェスに出演、哀愁が漂うメロディーはリスナーの心を打つ。実は初めて会う両バンドは台湾の音楽アワード「2021年第12回金音創作獎」で名前が並ぶことがあった。当時、Cody・Lee(李)は海外ゲストとして招聘され、ビデオ出演の形でライブを披露した。同じ大会で、Sorry Youthはベストロックアルバム賞を受賞。国籍はもちろん、世代、曲風、性格も大きいな差異を持つ両バンド、もっと共通点があるのではないですか?お互いの音楽をどう思っているのか?と思い、Cody・Lee(李)の高橋響(Vo.Gt.)、力毅(Gt.Cho.)、ニシマケイ(Ba.Cho.)、Sorry Youthの維尼ウェニー(Vo.Gt.)、薑薑(Vo.Ba.)、宗翰(Vo.Dr.)の六人にインタビューを行いました。
―まずは、お互いの第一印象を聞きたいです。
高橋響:単純に格好いいバンドだなというのが第一印象で。色んな風景を思い出すノスタルジックなサウンドで、ミュージックビデオもすごく良い。
力毅:映画だよね!
高橋響:そう、映画みたいな感じで。というか、好きな感じで。
Cody・Lee(李)一同:うんうん!
ニシマケイ:たぶん好きな音楽は近いんじゃないかと。
―Sorry Youthのメンバーはどうですか?
維尼(ウェニー):若いからこそ作れる音楽(笑)この数年日本に来られなかったので、流行っている日本音楽はミュージックビデオと曲を通してリサーチしていていたんですが、Cody・Lee(李)の音楽は人気なので、ずっとチェックしていました。生のライブは楽曲とはまた違う魅力があると思いますので、楽しみにしています。
高橋響「(僕らの音楽は)都会の温かさと田舎の温かさがうまく共存している世界。そこに一本『愛』という軸がある」
維尼「僕らの音楽を例えるならロードムービー」
―今回2バンドが出会うきっかけとなった「浮現祭Emerge Fest.」のテーマは「愛與和平」(ラブ&ピース)で、Cody・Lee(李)はほとんどの曲には「愛」という言葉が出ています。もしCody・Lee(李)の曲を一つの世界に例えるとしたら、そこにはどういう風景が見えますか?
高橋響:個人的には、都会と田舎が共存している、都会の温かさと田舎の温かさがうまく共存している世界です。そこに一本「愛」という軸がある。
維尼(ウェニー):Sorry Youthなら、たぶんテーマはラブ&ピース、そしてビールになるかも(笑)
―逆にSorry Youthほとんどの曲は「愛」という言葉が出てきませんが、それでも曲を通して、家族、友人、世界に対する愛を感じることができます。ご自身ではどう思いますか?
維尼(ウェニー):僕らの音楽を例えるならロードムービーのようです。曲の尺が長く、演奏の部分がメインで流れが進んでいる感があると思います。僕らメンバー全員は旅行好きで、それなりの要素も曲に取り込んでいます。
薑薑(ジャンジャン):僕らの曲はあまりリピートの部分がないので、ひたすら前へ進んでいる感じを出しています。
―「Emerge Fest.」もう一つのテーマは「世界的冒險」(世界への冒険)で、新しいものに挑戦する意味合いあります。Cody・Lee(李)の曲も毎回新しい試みがある気がしていますがいかがですか?
高橋響:確かにいつも新しいもの作っているような感じはあるんですけど、単純にバンドやっている中で、いまの日本のトレンドの音楽は個人的になんか退屈だなと思うのが多くて。Sorry Youth を初めて聴いた時もそうですけど、刺激がやっぱり欲しくて音楽を聴くから、自分もそんな刺激を与えられような、毎回新鮮さがあるような楽曲を作れるように心がけています。
宗翰(フレッド):確かにCody・Lee(李)の音楽を聴くと、聞き心地の良いメロディーの裏に狂気もあって、他の日本のバンドではない新鮮さを感じました。
維尼(ウェニー):僕の友人の4歳の子もCody・Lee(李)の楽曲『我愛你』がすごく好きです。毎回ドライブの時にこの曲が流れたら大喜び。
Cody・Lee(李)一同:へぇ――4歳!?
高橋響:うれしいです。
―子供にもCody・Lee(李)の魅力が伝わっていますね。「Emerge Fest.」のテーマ「冒険」に続いて、今回Cody・Lee(李)は初めて海外に行きますが、Sorry Youthはすでに色んな都市や国でライブをした経験があります。今まで一番冒険したと思うエピソードはありますか?
宗翰(フレッド):カナダの経験が一番印象的でした。カナダのライブ条件は台湾、日本ともかなり違うと思うが、当時楽器から電飾、ステージ部品まで台湾から持ち込んでだので、ステージのセッティングを終えただけでもうかなり疲れました。さらに、スタッフは計画性的な人ではなかったので、特に日本のスタッフの職人精神と違って、文化的差異を感じました。
薑薑(ジャンジャン):ひとつ特にCody・Lee(李)の皆さんに忠告をしたいのは海外に行く際に電圧に関して冒険はしない方がいいです。日本と台湾の電圧は110vと100vという些細な違いですが、ちゃんと変圧器を用意する方がいいです。電圧の問題で、前に一回日本でライブした際に、エフェクターが壊れました(苦笑)。
ニシマケイ「海外のバンドを見るときに、嬉しいのはやっぱ日本語で。伝わらなくても何か一言メッセージがあると、やっぱうれしいなと思います」
―日本でのライブの話も出ましたが、今までSorry Youthは何回か日本でライブしましたた。Cody・Lee(李)から日本でライブを盛り上げるコツを教えてもらいたい。
高橋響:ライブのアドバイスと...(苦悩)Sorry Youthのライブ映像を見ると、台湾はいつも盛り上がっているけど、日本は静かな人多いような気がする。僕たちが気を付けていることは、人はそれぞれ見方が違うから、それぞれ楽しんでもらえるように...部活の話になってきた...もっと適確なアドバイスある?
Cody・Lee(李):(一同爆笑)
ニシマケイ:自分が海外のバンドを見るときに、嬉しいのはやっぱり日本語ですね。伝わらなくても何か一言、(MCで日本語で)メッセージがあると、やっぱうれしいなと思います。
高橋響:確かに、それをしよう!(笑)
―逆に、Sorry YouthからCody・Lee(李)へ、台湾のライブに対して何かアドバイスはありますか?
薑薑(ジャンジャン):やはりニシマケイさんがおっしゃった通り、台湾の言葉をしゃべってくれたら、なんでも台湾のファンに受け入れられると思います。
宗翰(フレッド):お酒のネタとか…
薑薑(ジャンジャン):台湾語もいいと思います。
(Sorry Youthが「ワ・アイ・リ―(愛しているの台湾語)」「ジン・ド・シャ―(ありがとうの台湾語)」「ホ・ダ・ラ(乾杯の台湾語)」などを提案した)
維尼(ウェニー):後、台湾はいつでもサークルできます、声を掛けたら、バラード中でもありです。
薑薑(ジャンジャン):直接ステージを降りてモッシュするのもありです。
高橋響:(モッシュ)まだやったことないね。
ニシマケイ:ないっすね。
高橋響:(ここ数年は)ソーシャルディスタンスもあったので、ずっとモッシュをやってみたかったんです。
力毅:(モッシュすると)言ったら、皆いなくなっちゃいそう(笑)
―今回はCody・Lee(李)初めての台湾での公演ですが、Sorry Youthからどこかおすすめしたいスポットはありますか?事前に聞いた情報では、夜市、ルーローハン、古着屋、あとはお粥?も食べたいそうですね。
高橋響:誰か(お粥を)言った?(笑)リノちゃんかな?
ニシマケイ:そう(笑)
宗翰(フレッド):台北復興北路の「清粥小菜」(お粥とあらゆる種類のおかずを提供する形態レストラン)。あの辺りの店は殆ど24時間営業で、そこに僕らも通う店もあります。
維尼(ウェニー):映画監督の是枝裕和監督もすごく好きだそうです。
薑薑(ジャンジャン):もし時間があれば、萬華エリアの鹹粥(台湾語:キャン・ムァイ、雑炊のようなお粥)もおすすめです。ついでにお寺にも行けますし。
高橋響:温泉がすごく好きですなんですが。なにかおすすめのところはありますか?
薑薑(ジャンジャン):交通が便利な「北投」エリアをお勧めします。そこは台北メトロで行けますし、日本語が分かる人も多くて、日本語が通じると思います。
高橋響:へえ、ぜひ行ってみます。
薑薑(ジャンジャン):今回のフェスは台湾・台中の清水ですよね。そこで有名な食べ物は「米糕」(もち米を炊いたケーキ型のおかず)で、とくに有名な店が2ヶ所あって、それぞれのファンはよくどちらが一番おいしいかと議論するんです。なので、ぜひ2ヶ所を食べ比べてみて、どちらが一番おいしいか教えてもらいたいです。
維尼(ウェニー):逆にファンにこの質問を投げたら、すごく盛り上がると思います。
(主催者のNunoさん:「ファンで喧嘩が始まるかもしれないけど、これは絶対聞いたら面白いですね。」)
Cody・Lee(李):(一同爆笑)そうしたら、そこでモッシュ!(笑)
高橋響「(薑薑と)一緒にレディオヘッドとFishmansを聴きながら、世界の終末を迎えていこう」
―旅行の話も出ましたが、最近では旅行の時に聞く曲はありますか?
薑薑(ジャンジャン):最近では日本のバンド「Fishmans」をよく聞いています。旅行にはよく合いますね。
力毅:「チューリップ」の《心の旅》はおすすめです。旅行のプレイリストを作るときに、毎回入れているかもしれない。
高橋響:台湾のバンドと言ったら「DSPS」はノスタルジックな雰囲気で、おしゃれな感じもあって、夜に車で移動するときに聞くとすごく気持ちがいいですね。
―皆さん結構台湾の音楽を聴いていますね。
ニシマケイ:一番好きな台湾バンドは「No Party For Cao Dong」(草東沒有派對)。それがもしかしたら最初に意識した台湾の音楽かもしれない。
力毅:「BOB IS TIRED」(逃走鮑伯)も好きですね。僕は人が走っているのミュージックビデオが基本的に好きで、運転する時にも聴くんです。
―最後の質問です。今日のインタビューの間、皆さんの距離も縮められたと思いますが、もし今日のメンバーから一人を冒険のパートナーに選ぶなら、誰を選びますか?
ニシマケイ:僕はビールを好きなんで、維尼(ウェニー)と一緒に飲みながら行こうかな。
維尼(ウェニー):ノープロブレム!
高橋響:もし無人島に行くなら…逆に皆さんが好きな音楽を聞きたい。例えば僕はレディオヘッドが好きです。
薑薑(ジャンジャン):最近はレディオヘッドのメンバーであるトム・ヨークの新バンド「The Smile」が好きです。
高橋響:じゃ一緒にレディオヘッドとFishmansを聴きながら、世界の終末を迎えていこう。
薑薑(ジャンジャン):それはいいですね。
―力毅さんはどうですか?
力毅:几帳面の人、例えば部屋入ったら靴を並べる人とは(冒険に)いきたくないかな。
維尼(ウェニー):じゃ全然靴を並べない宗翰(フレッド)は行けると思います!
宗翰(フレッド)昨日あなたが酔っぱらって部屋に入ってきた時には、僕が靴を並べてあげたんだけど!(笑)
インタビューを終えて、翌日の『Emerge Fest. Japan』で、Cody・Lee(李)とSorry Youthもお互いのライブを鑑賞し、当日のインタビューを参加しなかったメンバーも一緒に楽屋でビールで乾杯しながら、音楽を熱く語って、台湾での観光や今後の音楽交流を色々話したそうです。主催者・Nuno(老諾)さんは『Emerge Fest. Japan』でたくさんの若い世代の歌手が交流する姿を見て感動しましたと言った。フェスの趣旨「世界への冒険」の通り、台湾、日本、タイなど国籍が違う歌手たちを繋ぐだけではなく、日本でプロモーションライブを開催したり、パッケージツアーを組んで日本のファンを台湾へ連れて行ったり、音楽を通して、コロナ禍でできた人と人、国と国の距離を縮めたいそうです。さらに本イベント『Emerge Fest.』の開催場所は台中の市中心から離れる「清水」で、イベントを通し、音楽リスナーに現地グルメと観光スポットを紹介することにより、地域活性化の目標を達成するのだそうです。
Cody・Lee(李)とSorry Youth、そしてほかの歌手、コロナ禍が去った現在、交流がだんだん盛んでいる世界、今後の音楽活動もますます期待できます。
■取材協力
Emerge Music/Sony Music Entertainment/海口味有限公司/duo MUSIC EXCHANGE/帆帆魯肉飯
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