大石始と竹内将子が振り返る!台湾の個性派バンドが勢揃いした「美麗島 Underground」

Sep-02-2023

2023年8月5日(土)と8月7日(月)、台湾のアンダーグラウンド・シーンで活躍する3組のバンドによる来日イベント「美麗島 Underground」が山口情報芸術センター(YCAM)と東京・青山月見ル君想フで開催されました。

出演アーティストは、台北発の浪漫民謡エクスペリメンタル・バンド落差草原WWWW(Prairie WWWW)、ロックからアンビエントまで多彩なジャンルを取り入れたミステリアスなサウンドが話題のMong Tong、そして台湾伝統音楽とロックと融合させた百合花(Lilium)。近年、大きな盛り上がりを見せている台湾のインディ・シーンの中でも、とりわけ話題性の高い3組が一堂に会するスペシャルなイベントとなりました。

そこで今回、同イベントに「完全に客として参加していた」という文筆家、大石始氏と、ラジオパーソナリティー、竹内将子氏にインタビューを行い、そのハイライトシーンや見どころを振り返るとともに、出演アーティストたちの魅力についても語ってもらいました。

 

一つの「旅」を見せているようなライブを繰り広げた落差草原WWWW(Prairie WWWW)

 


――今回、お二人は招待やゲストではなく、プライベートで行かれたんですか?

大石「僕はこのライブが発表されて、その日のうちくらいに前売りチケットを買いました。『これは見なくちゃ!』とかなり前のめりで遊びに行きました(笑)」

 

――竹内さんはいかがでしたか?

竹内「私も予定の調整は必要だったものの、告知された瞬間飛びつきそうになりました(笑)『美麗島Underground』というタイトルにも強く惹かれました」

 

――元々彼らの音楽がお好きだったからと思いますが、特に目当てのアーティストや、「これが聴きたい」といった楽曲はあったんでしょうか?

大石「自分でもDJでよくかけていることもあって、Mong Tongは特に見たかったんですよね。普段よくかけている南米の音楽なんかとも違和感なく交わるし、台湾の土着性や民族性みたいなものをライブでどう表現するのか、ずっと興味がありました」

 


――Mong Tongは竹内さんがMCを務める「Asian Breeze」(DATE-FM)にもゲストとして出演してますよね。竹内さんもMong Tongには注目されてましたか

竹内「そうですね、私は若干ミーハー的なところもありまして、『何かこの兄弟かっこいい』みたいなところから入って…(笑)でも今回どんなライブになるのかドキドキしていました」

 

――確かに、ミステリアスな魅力がありますよね。

竹内「そうなんです。演奏が始まる時も、言葉を発するわけでもなく、静かに現れて。彼らは目を赤い布で覆っているのがトレードマークなんですけど、今回はそれが黒だったというのもあり、さらにミステリアスになっていたというか…(笑)そんなビジュアルも含めて、彼らの世界に引き込まれていくっていう」

 

――今回はグッズも買われたそうですね。

竹内「はい、これはMong Tongが使っているのと同じ目隠しなんですけど、結構大事にしていて、まだ開けてもいないんです(笑)」

takeuchi mongtong goods

竹内氏が購入したMong Tongのグッズ。


大石
「いいですね、アイマスクなんかにも使えるかもしれないですよね。長距離バスに乗る時とか(笑)」

 

竹内「以前、彼らに『よく目隠ししたまま演奏できますね』って聞いたら、『これは内緒の話なんだけど、実は・・・3つ目の目があるから』なんて言われて(笑)ほんと彼らはミステリアスなんですよね。けど、実はこれ透けているんで、見えてるとは思うんですよ。あとはTシャツも思わず買っちゃいましたね」

 

――その答えはMong Tongらしいですね。竹内さんは今回お目当てのアーティストはいたんですか?

竹内「落差草原WWWWは数年前に一度東京で観たんですけど、その時は曲も聴けていなかったのにも関わらず、すごく印象に残っていて。もう一度ちゃんと見たいと思ってました。それと、百合花ですね。去年秋に渋谷で短いショーケースライブを観てから、ずっと彼らのライブの機会を待っていたので楽しみにしていました。なかなか日本でライブを見る機会がなかったで」

 

――最初は落差草原WWWWだったわけですが、会場の雰囲気はどうでしたか?

大石「最初は割と少ない感じだったんですけど、みるみる人が増えて、2番目のMong Tongが始まる頃にはほぼ満員でしたね。僕と同じように彼らがどうライブを行うのか関心を持っている人が多いような印象は受けました。出演順も発表されていなかったので、『最初は落差草原WWWWか』という驚きもありましたね」

 

――彼らのライブはいかがでしたか?

大石「面白かったですね。彼らの作品は聴いてましたけど、YouTubeでライブの映像を見たりとあえて予習をしていなかったんですよ。だから、どんな形で演奏するのか興味がありました。メンバーもそれぞれ楽器を持ち替えて演奏しますし、いわゆるロックバンド的なアンサンブルでは全然ないですよね。BIG ROMANTIC RECORDSのwebサイトに彼らへのインタビューが載っているんですが、それを見ると彼らがどういうアーティストから影響を受けてるのかよくわかるんです。たとえばニューヨーク拠点のイーライ・ケスラー(Eli Keszler)とか、現代ジャズのマカヤ・マクレイヴン(Makaya McCraven)、イタリアの音楽家、ロベルト・ムッシ(Roberto Musci)、フランスの実験音楽家、ピエール・バスティアン(Pierre Bastien)など、いわゆるロック的な音楽ではないんですよね。実際、リズムの組み立て方なんかも非常に現代的でおもしろいですし、そこに現代のジャズやアンビエントも混ざり合っていて、すごくスリリングでした」

 

――竹内さんはいかがでしたか?

竹内「落差草原WWWWを聞くと、いつも森とかジャングルにいるような気持ちになるんですよ。雄叫びのような声や音が聞こえたり、ドラムの音にはっとしたり、特に印象的なのがリコーダーで、その音でまた現実に引き戻されて…とにかく一言では言い表せないような魅力のあるバンドだなって思います。実験的な要素とポップさのバランスがいいですね。不思議と聞きやすくて、グルーヴに乗れるんですよ。ライブでも引き込まれる瞬間が何回もありました。こういう音楽をどのくらいの人たちが聴いているのか気になっていたのですが、個人的には想像以上に観客が多かった印象です」

 

大石「ところで今回の3バンドの並びって台湾でもなかなかないことなんでしょうか。(会場の)『月見ル君想フ』に入り切るのか心配なくらいだったんですが」

 

竹内「台湾でもこれまでなかった組み合わせなんじゃないでしょうか?今回は山口でも公演が行われていて、120~130人くらい動員したみたいです。これってすごいですよね」

 

――落差草原WWWWで特に印象に残った曲とか、ハイライトシーンはありますか?

大石「これは僕の印象かもしれないんですけど、曲っていう単位よりも、一つの『旅』を見せられてるような感じがありました。大きな流れのなかに空白があったり、即興的なパートがあったり、さまざまなパーツが浮かび上がっては消えていくみたいな、そんなライブでしたね」

 

――大石さんは数多くのライブやお祭りに参加されていて、日本の土着性やフォークロアを現在進行形で体感されています。そういったカルチャーへの関心が高い日本人が落差草原WWWWのライブを見ても魅力を感じると思いますか?また、そういったコンテキストを持つ日本のアーティストとの共演もあり得るのでしょうか?

大石「落差草原WWWWのライブってちょっと神事みたいな雰囲気がありますよね。唯祥(ウェイシャン)の声も神官の祝詞みたいなところもあるし。でも、必ずしも実際の神事に則っているわけではないし、民族的要素を表現しているわけでもない。おそらく無意識のうちにそうした要素が滲み出ているところがおもしろいですよね。日本のリスナーにも響くものがあると思います」

 

――ちなみに、彼らが日本のアーティストとコラボレーションするとしたら、大石さん的には誰がおすすめですか?

大石「あの編成のなかに即興に対応できるプレイヤーが加わったらおもしろいかも。たとえばベースの千葉広樹さんとかドラムの石若駿さんとか、あるいはギターの山内弘太さんとか。中村佳穂さんや石橋英子さんに即興で入ってもらうとか、いろいろ妄想が広がります(笑)」

 

――竹内さんは今回の落差草原WWWWのライブ、何が印象に残りましたか?

竹内「そうですね、曲ごとにいろいろと変化はあるんですけど、気づいたらライブ全体が1本の曲に聞こえているような印象もあるんです。今回演奏された『黒夢(Formosa Dream)』って曲がすごく好きで、YouTubeにライブ・セッション動画がアップされてるんですけど、四合院(しごういん)(※2)のような場所で演奏してるんです。その映像と曲がすごくマッチしていて…今回、ライブで聴けて嬉しかったですね。『アンダーグラウンド』って言われると、ちょっととっつきにくさを感じる人もいるかもしれないですけど、シンプルに楽しめるライブなので、色んな方に見てほしいと思いました」

 

※2 中国の伝統的な住居の形態の1つ。正門から入ると最初に中庭があり、この中庭を中心に四方を取り囲むように建物が配置されている。

 

 

スリリングでダンサブルなライブを展開したMong Tong


――そして、落差草原WWWWがパフォーマンスを終え、Mong Tongの出番です。彼らのパフォーマンスはいかがでしたか?

大石「最高でしたね!このころには僕の酒量も増えてきて、ずっと踊ってる状態でした(笑)。オープニングでは2人で向かい合ってドラムバッドを叩いていましたけど、ちょっとインドネシアの竹ガムランみたいな感じがあって、最初からめちゃくちゃおもしろかった。ミニマルな民族音楽みたいな感じというか。その後、ギターやベース、シンセなど複数の楽器を持ち替えて演奏していくわけですけど、何が飛び出してくるか予測できないスリルみたいなものがありました」

 

――竹内さんはどう思いましたか?

竹内「そうですね、セットリストのほとんどが最新アルバムからというチャレンジングな内容でびっくりしました。基本的にギターとベースを演奏してるイメージがあったので、サンプリングパッドの演奏から始まったのも驚きでしたし。お客さんも多くて、彼らへの期待値の高さも感じましたね」

 

大石「音源を聴いていると静かな印象を受けますけど、ライブ自体はすごくフィジカルというか、身体を揺さぶる音楽ですよね。特にホン・ユー(洪御)のベースがすごかった。思った以上にバキバキで。ジュン・チー(郡崎)のギターもちょっとクルアンビン(Khruangbin)みたいな雰囲気があって、それぞれの楽器からいろんな音楽の匂いがしてくる。ジュン・チーのシンセがエチオピア音楽みたいに聞こえる瞬間もありました」

 

――彼らの音楽は静かなようでいて、実は毒を忍ばせてる感じもありますよね。2人ともメタルなどのエクストリーム・ミュージックを聞いていた過去がありますし。彼らは「Asian Breeze」にも出演していますけど、人柄はどうなんですか?

竹内「音楽からは想像がつかないくらい、素朴な台湾のお兄ちゃんって感じなんですよね。通訳の方に聞いたら、2人は台中の地方の訛りがあるみたいで。実は2人は兄弟で、一緒に住んでいたこともあったりしたみたいで、仲がすごくいいんですよね。インタビューをしてる最中も2人でずっと話していて。ひらめいたらすぐに相談したいっていう感覚があるみたいで、2人の頭の中には常に色々な考えが駆け巡ってるんだなっていう印象でした」

 

――今回は7曲目の『金土(Gold Earth)』で百合花のリン・イーシュオ(林奕碩)がゲスト・ヴォーカリストとしてステージに現れたと聞きました。

竹内「そうなんです。イーシュオが何の前触れもなく、現れて。けどその直前、ホン・ユーが口元をニタっとさせていたのは見逃しませんでした(笑)。イーシュオさんが入ると一気に東洋的な雰囲気になるんですよね。歌詞に日本語も織り交ぜていて、面白かったです」


――大石さんはどう思われましたか?

大石「兄弟のすごくクローズドな世界の中に、別のキャラが入ってくることで全然景色が変わりますよね。それだけ2人が作り出している世界が濃いのだとも思います。このようなイベントだからこそ実現したんでしょうし、『いいもん見たな』という感じがすごくしましたね」

 

――これだけ密度の濃いイベントだとこの辺りで集中力も切れそうなものですが、疲れはありませんでしたか?

大石「Mong Tongは本当に素晴らしくて、あと2時間ぐらいやってほしかったです(笑)。それはMong Tongの演奏する音楽のBPMにも関係してると思うんですよ。ディスコ〜ハウスの120ぐらいで踊らせるというより、90から100ぐらいのテンポでゆらゆら揺れるような感じ。だから、長時間聴いていてもまったく疲れないんです。ここ10年ぐらい南米のフォークロアの要素を取り入れたダンスミュージックが注目を集めているんですが、そのあたりの音楽も同じぐらいのBPM(※3)なんですよね。Mong Tongがこういった音楽を聴いているのかは分からないですけど、彼らもダンスとチルアウトが共存する現在のダンスミュージックの感覚を体現していると感じました」

 

※3 BPM(Beats Per Minute)は「1分間に何回のビートがあるか」という単位で、音楽のテンポを示す指標。

 

――少しレトロ・フューチャーというか、ヴィンテージな雰囲気も漂うMong Tongですが、大石さんの視点だとより現在の音楽という感じがしてきますね。

大石「彼らのインタビューのなかでホン・ユーは『百合花のリン・イーシュオは台湾の伝統音楽を学んできていますし、本当の意味で、台湾の音楽を作っていますが、私たちはいつもpseudo-Taiwanese music(偽の台湾の音楽)を作っている』と多少自虐的に話していましたけど、それも現代の音楽の形だと思うんですよ。実際は台湾の伝統的な葬儀にインスパイアされていたり、台湾の風習を色々な形で自分たちの表現に落とし込んでるわけで、そういった形で自分たちのアイデンティティを表現している。民族性や土着性が変容するなか、どのようにアイデンティティを表現するかということは世界的な課題でもあるわけで、その意味でもすごくリアルな現代の音楽をやってるなっていう感じがしました」

 

――彼らに対して先入観を持ってしまうのは勿体ないかもしれないですよね。

大石「そうですね。日本の大きなフェスにブッキングされても、きっと盛り上がると思うんですよ。本当にいろんな人に聞いてほしいですね」

 

――大石さんが一つのテーマとして追求されているお祭りは、どんな人でも参加できて、音楽に身を任せて楽しめる普遍性があります。彼らのライブにもそのような、お祭りにも通じる魅力は感じましたか?

大石「確かにMong Tongのライブにも祭り感を感じましたね。あらゆる前情報をすっ飛ばして、ダイレクトに刺激を与えてくれる身体感覚があるという点では、祭りとMong Tongのライブは近いのかも。いま思うと、サンプリングパッドを叩いたオープニングは『祭りが始まるよ』という合図みたいなものだったのかもしれないですね」

 

――今後、彼らが日本のアーティストとコラボするとしたら誰がいいと思います?

大石「食品まつり aka foodmanとかいいんじゃないですかね。彼はロードサイドの土着性みたいなものを意識して創作活動を続けていて、Mong Tongとも共通点が多い感じがします。本物の土着性なのか作られた土着性なのか分からない感じも近いんじゃないかな。個人的にはすごくコラボを観てみたいです 」

 

八代亜紀の『女心は港の灯』もカバー!アジア共通の感覚が浮かび上がった百合花のライブ

 

――そして、今回のトリとなった百合花ですが、いかがでしたか?

大石「イーシュオ(ギター/ヴォーカル)はギターと月琴を持ち替えながら演奏してましたが、月琴の音色にまず引き込まれましたね。台湾の伝統音楽である北管・南管を取り入れていて、すごくオリジナリティがある。おもしろいバンドだと思いました」

 

――イーシュオと知り合いでもある竹内さんはお土産をもらったんですよね?何をもらったんですか?

竹内「台湾の伝統的な結婚式で配られるお菓子をもらって。ちょっと月餅っぽいんですけど、中身がぎっしり詰まっていて、重いんです。よく台湾人の方からお土産をもらうことがあるのですが、台湾のパイナップルケーキなどの一般的なものが多い中、こういう渋いチョイスをするのはイーシュオさんらしいですし、日常レベルで伝統を意識されている方なのだと思いました。百合花は歌が台湾語なので、歌詞の意味が全く分からなくて、それでも聴き続けているアーティストです。けど、やっぱりイーシュオさんのあの声に説得力があるんだと思うんですよね」

takeuchi lilium gift

百合花のイーシュオが竹内氏に渡したお土産のお菓子。

――今回は八代亜紀の楽曲『女心は港の灯』のカバーも披露されたのだとか。

大石「あれはどういう流れで演奏されたんですか?」

 

竹内「台湾でもよく知られている曲みたいですね。イーシュオさんは日本の演歌がすごく好きなんですよ」

 

大石「すごく良かったですよね。あれでお客さんとの距離もグッと近くなった気がしますし。ちょっと前に同じ月見ル君想フで韓国のイ・ヒムンさんっていう歌い手のライブを見たんですけど、彼もそのライブで『矢切の渡し』を歌ったんですよ。イ・ヒムンさんは日本に留学していた時期があったり、お母さんが日本に住んでいたこともあったりと、日本との関係が深くて、そうしたエピソードと共に『矢切の渡し』を歌った。それが切々といい歌声で。今度はイーシュオが『女心は港の灯』を歌ってくれて、演歌っていいなと思いました。アジア全体で共有しているものが浮かび上がるような感じがあって、嬉しかったですね」

 

――意外だし、渋い選曲ですよね。他にも印象に残った曲はありましたか?

竹内「『芸術家』という曲があって、その歌詞を日本語にして歌ってくれたんです。もともと好きな曲なのですが、台湾人が歌う日本語なので、もちろん日本語を母語とするミュージシャンとは違うんですけど、その違和感がむしろいいんです。良い意味で心の琴線に触れるという感じがします」

 

――本インタビューでの大石さんへのお決まりの質問となりますが(笑)、リリウムが日本でコラボするなら誰がいいでしょうか?

大石「百合花は非常にロックバンド的というか、それもちょっとヴィンテージ・ロックというか、昔ながらのスタイルのバンドでもありますよね。なので、日本のロックフェスに出ても盛り上がると思います。あと、彼らのような伝統文化を取り入れたバンドが数多く集まっているのが、愛知県でやっている『橋の下世界音楽祭』っていうフェス。雲南省のシャンレン(山人)とか内モンゴルのHANGGAIも出てるんですが、百合花も合いそうですね」

 

――客層はどういった雰囲気なのでしょうか?

大石「アジアの伝統文化に関心がある人も多いですけど、ロックフェスに来るような感覚で遊びに来ている人も多いと思います。若い人も多いし、幅広いですよ」

 

――大石さん的に、百合花の印象はジャンルだとやっぱり「ロック」なんですね。

大石「そうですね。イーシュオの見た目の印象もあるかもしれないけど(笑)」

 

竹内「私もそうでした。私はCDのアートワークとか含めて、彼らの全てが好きで。最新アルバム『不是路(Road to...)』が金曲賞でアルバムデザイン賞も受賞していますが、ビジュアルも素敵なんですよね。けどそのアートワークもモチーフは台湾の伝統的な祭壇だったりして…一見ポップなようでいて、隅々まで伝統要素が取り入れられているんですよね」


――百合花は台湾の音楽を最も分かりやすい形で取り入れていますが、台湾の景色が思い浮かんできたりしますか?

竹内「それはありますね。特に南の方の景色をイメージしますし、布袋木偶劇(ポテヒ)(※4)が浮かんだりもします。あと、ドラムのディー・チェン(陳奕欣)さんはちょっとジャズの要素を感じますよね」

 

※4 台湾の伝統的な人形劇。主に手で操作される革製の人形を用いて物語を演じる。

 

――ディーはジャズドラムも学んでたんですよ。引き出しが多いドラマーですよね。

竹内「そうですね。この間、彼女が台湾のThe Chairs(椅子樂團)というバンドで叩いているのを見て、また全然違う印象なんですよね」

 

――ここでまとめとなりますが、改めて今回のイベントかがでしたか?

大石「やっぱりライブを見ないと分からないことって多いですよね。これまでコロナ禍で海外アーティストの来日が難しい状態が続いていたわけですけど、ようやく行き来ができるようになった。ライブで音を浴びることで、皮膚を通して伝わってくることってたくさんあるんだなと再認識しました。今回の出演アーティストたちのようにバックボーンが多様で、なおかつ視点やテーマが複雑な場合、ライブを見てはじめて腑に落ちることもありますよね。遊びに行って本当によかったと思います」

 

竹内「そうですね、今回のライブをみて、CDとか配信では伝わっていなかった部分があるんだと思いました。ありそうでなかった(笑)、なかなか見ることが出来ない3組のライブだったと改めて実感しています。東京と山口だけでなく、機会があればもっと他の都市も回って欲しいですし、日本各地の音楽ファンに見てほしいですね」

写真提供:大浪漫唱片 Big Romantic Records