幾何学模様(Kikagaku Moyo)のGo Kurosawaが感じる台湾の音楽の魅力とは?

May-10-2023

Guruguru Brainは、日本のサイケデリック・ロックバンドである幾何学模様(Kikagaku Moyo)のGo Kurosawa(ドラム/ヴォーカル)とTomo Katsurada(ギター/ヴォーカル)によって2014年に設立されたレコードレーベルです。当初は東京を拠点としていましたが、2017年にアムステルダムに移転。

設立以来、Guruguru Brainはアジアのアンダーグラウンド音楽を発信する、刺激的で革新的なレーベルとして急速に成長しました。アジアのアーティストが欧州の大型音楽フェスティバルで演奏するのを手助けしたり、さまざまなアーティストの発掘も続けています。

彼らがリリースした台湾のアーティストはMong Tong破地獄(Scattered Purgatory)落差草原wwww(Prairie WWWW)が含まれ、台湾音楽を積極的にリリースしている海外レーベルの一つです。彼らのインスタグラムのストーリーズから、Goが台北に滞在していることを知り、インタビューを行うことができました。

 

Go Kurosawa Taiwan Session 20230506

台北の音楽スタジオ「肥頭音樂 Fat Head Music」で行われたセッションライブにてドラムを叩くGo Kurosawa

破地獄(Scattered Purgatory)のライブを見た時、「もっと多くの人に聴かれるべき」と感じた

—あなたの台湾との関わりについておしえていただけますか?

Go Kurosawa「フェイスブックの共通の友人を通じて、破地獄のメンバーに出会ったんです。当時、私たちはTokyo Psych Festというサイケデリックフェスを運営していました。そこで、破地獄を含む台湾のバンドとインドネシアのバンドを招待して、日本でツアーを企画したのが始まりです。

そこで破地獄の演奏を初めて見ました。彼らはステージ上でろうそくを灯して、儀式のようなパフォーマンスを披露したんです。彼らが自分たちの文化をミックスさせ、オリジナリティのある音楽を作っていることに驚きましたね。

そして、『彼らの音楽はもっと多くの人に聴かれるべきだ』と感じました。そこで私たちは彼らの1stアルバム『稗海遺考(Lost Ethnography of Miscanthus Ocean)』を私たちのレーベルの最初のフィジカルリリースとして選びました。落差草原wwwwとMong Tongも彼らの人脈を通じて知り合ったんです。」

―今回、あなたは台北に滞在し、多くのライブに参加したと聞きました。台湾の音楽をどのように表現しますか?そして、日本との違いは何だと思いますか?

Go Kurosawa「私が見た限り、ライブでのミックスはクリアで高音域が強調されたシャープな音だと感じました。明るいシンバル音や鋭いギター音など、日本に比べて高音域が目立っている。個人的には、アナログで温かみのある中低音の方が好きなんですけど。

というのも、音域など音のディテールだけでなく、音量が胸を揺らすこともあるからです。また、日本と比較して、台湾の音楽シーンはより混沌としていますよね。多くのミュージシャンが複数のバンドに所属してたり、違うジャンルのミュージシャンが一緒に演奏したりしているのを見て新鮮に感じました。

日本は音楽教育が最も発達した国の一つとされており、多くの場合音響エンジニアたちも専門学校を出ています。しかし、この成熟したシステムの結果として、日本でリリースされる音楽のほとんどは大手レコード会社が定めた基準に従う必要があります。その点、日本と比べて台湾は制限が少ないと思います。」

 

Go Kurosawa Taiwan Session 20230506 pt2

台北の音楽スタジオ「肥頭音樂 Fat Head Music」でのセッションライブの様子

 

台湾の音楽は何も不足していない、大切なのは「自分にしかできないこと」を考えること

―Guruguru Brainは、台湾のアーティストを数多くリリースしていますが、全体的にどのような特徴があると思いますか?

Go Kurosawa「彼らの音楽をはじめて聴いた時、まったく新しいタイプの音楽だと思いました。彼らが西洋のバンドから影響を受けてることは分かりますが、生み出す音楽は全く違います。

皆、独自のコンセプトがありますし、それぞれのアイデンティティにも深く関係していると思います。それと同時に、西洋の音楽に触発されていることも聴き取れます。また、彼らの音楽がジャンルの枠にとらわれていないことにも注目しました。

例えば、破地獄やMong Tongは低音やパーカッションの可能性を探求していますし、落差草原wwwwは攻撃的なリズムパターンを持ちながらも音の透明感を保っています。また、Bremen Entertainment Inc.やCold Dew、Forestなど、他のバンドもそれぞれ独自のスタイルを持っていますよね。」

―あなた自身、経験豊富かつインディペンデントなミュージシャンでもあります。台湾の音楽がインターナショナルなプロモーションをする上で、欠けているものがあるとすれば何でしょう?

Go Kurosawa「何も不足していないと思います。一つ言えるのは、台湾の音楽シーンは日本と比べて若いという点です。私は台湾のアーティストたちが『私たちは(海外のシーンを)追いかけている』と言うのを何度も耳にしました。しかし、私が重要だと思うのは、『自分たちにしかできないことは何であるか』を考えることであり、ある場所に到達していないと考えるべきではありません。

私がアメリカに住んでいたとき、日本の財団が主催する音楽イベント『Japan Nite』があり、何組かの日本のバンドがツアーを行っていました。しかし、オーディエンスの多くは、彼らの音楽が好きなのではなく、日本が好きな人たちという印象でした。ミュージシャンの立場からすると『〜出身』というのは副次的な情報であって、オーディエンスとは純粋に出す音で繋がりたい、というのが一番の願いだと思います。」

―Guruguru Brainの今後の計画について教えてください

Go Kurosawa「Mong TongとMaya Ongakuのアルバムをリリースし、11月には彼らのヨーロッパ・ツアーを行う予定です。

レーベルとしての仕事だけでなく、若いミュージシャンたちと協力し、彼らが自分たちの地域的制限から抜け出す手伝いをしています。私たちがDIYな活動を通じて得た経験と知識を共有し、彼らが自分自身の発言力を持ち、それぞれの目標を達成できたらいいなと思ってます。」