粗大 Band:ポップパンクのモンスターは進化する

Feb-29-2024

「Y2K」(2000年頃のファッションやカルチャー)がトレンドとなり、今の音楽シーンでは、ポップパンク(Pop Punk)がリバイバルしている。常に夏の雰囲気を醸し、心を躍動させるのがZ世代の若者たちに惹きつけるポップパンクしかない独特の魅力だ。率直でユーモアに満ちた態度で生活の悲喜こもごもを語り、難しい言葉を使わずに心の奥底にあるものを伝える。どのステージでも熱意と汗をかいながら全力で演奏し、いま台湾の若い世代のロックファンから注目を浴びているのが、粗大Bandだ。

「人生でうまくいかないことに立ち向かって、大声で『くそ食らえ』を言おう!」という、似てる読み音でつけられたバンド名で動き、現在は Lu (Gt/Vo)、Jamlong (Gt/Vo)、Joseph (Ba)、Ni (Dr) 4人編成で音楽活動を展開する粗大 Band。2022年、セカンドアルバム『難道我是一隻怪獸』(僕は怪獣ですか?)をリリースした。パンデミック下にフラストレーションの反動でポップパンクのモンスターと名乗って夏フェスのステージを上がり、爽快で疾走感のあるギターリフとシンプルでパンチのあるリズムが共鳴し、心の中の鬱陶しさも一掃されながら迅速に多くのファンから注目を集めた。

この勢いに乗じて、怪獣の足跡が台湾から海の向こうへと踏み出した。日本のポップパンクバンド AIRFLIP、See You Smile と展開したツアー『Global Monster Express』は台湾と日本の両地で開催された。それら多くの風景と経験を経て、粗大 Band は着実に未来へ進め、もはや青二才でぎこちない少年ではなく、将来に対する野心に満ちて進化していく、ポップパンクのモンスターである。

今回の Taiwan Beats では、2023年を走り抜けた心境及び今後の音楽活動について、粗大 Band のメンバーの4人に話を聞いた。

粗大 band メンバーの4人。 Ni(ドラム)、Joseph(ベース)、Lu(ギター/ボーカル)、Jamlong(ギター)(左➝右)

 

—— 今年夏末、粗大 Band 初の大型ワンマンライブ「粗大LAND:恋愛遊楽園」を無事に終了しました。2022年のアルバム『難道我是一隻怪獸』(僕は怪獣ですか?)リリース一周年記念のライブとも言われ、「遊園地」というテーマの発想もとても気になりますね。

Jamlong (Gt):そうですね。過去から現在に至るまですべてのコンセプトをまとめようとしたら、やはりいままで一貫したアメリカスタイルのポップパンクだろう。それで最初にビーチを思いついた。よく見たアメリカ青春映画のスタイルを取り入れ、その中に最もクラシックで代表的な『ベイウォッチ』のイメージをコアコンセプトにしました。

Lu (Vo/Gt):ビーチというイメージを中心にして発想したら、すぐカリフォルニアの海沿いにあった遊園地を思い出したから、なかなか面白くなるじゃないかと思ったのです。加えて、『難道我是一隻怪獸』をリリースした以来小規模のツアーイベントをしかまわらなかったし、Legacy Taipei を挑戦することからこのアルバムの締めくくりをつけろうと考えていました。

 

—— 「成長した」という気持ちが確実に伝わってきますね。

Jamlong (Gt):このアルバムをリリースする前に僕らの Instagram のフォロー人数は2000人しかいなかったです。今はもう一万を超えています。これって成長したとも言えるんですね。勢いがうまくでるのが一番大事だと思います!

 

—— 2023年、この一年間で何か大きな変化がありましたか?

Jamlong (Gt):仕事を辞めたことだと思います。僕は8月までずっとサラリーマンだったんですよ。その時「粗大LAND」ワンマンを準備しながらふと頭に浮かんできた考えだけど、「僕は必死でパンクロックを作っているのに、どうしてこんな生活を送っているか?」それで辞めたことにしました。社内ルールは結構厳しく髪染めも禁止されていたから、会社を辞めたらすぐ金髪を染めてみました。

Joseph (Ba):ライブ本数は増えていて昔のように対応したら、体の回復速度はだんだん遅くなったと気づいて、真面目に運動しはじめてアルコールの摂取もしっかり制限していることだと思います。いわゆる年をとったことですね。僕らの日本ツアーと「粗大LAND」ライブを担当するミュージックディレクターさんから会った初日に「本日からライブ前とライブ中はアルコール厳禁です」って言われました...。

Jamlong (Gt):そうだね。アルコールのないライブは明らかに上手になりました(笑)

Lu (Vo/Gt):僕は、ただのライブではなく確り「ショー」を作るということを意識し始めたのが一番の変化かもしれません。去年からステージに上がるチャンスが増えてきて、海外からのアーティストと共演するタイミングで色々経験交換もできました。『Global Monster Express』ツアーで知り合った日本バンドのボーカリストがほぼネブライザーで喉ケアしているということを聞いて、ワンマン前に僕も一台手に入れました。実際に使ったらとても効いて助かりました。このアルバムは僕らをつれて、想像以上に遠いところまでたどりついた。新しい自分を見つけられて、今まで見たことない景色を見せてくれました。

Ni (Dr):私は 2020 年にバンドに加入しました。『難道我是一隻怪獸』は私にとってバンドに入ってからの初めてのレコーディング作品です。チームの運営面は当時と比べると大きく異なり、メンバー同士がより深く知り合うことができました。この期間の変化が、今回のワンマンライブで明らかに見えると思う。ライブディレクターだけでなく、照明や VJ も合わせてデザイン、そして自分自身の技術力を高めることなど。これらは最も基本的な取り組みだと思います。確実に完成して、堂々と自分が成長したと言えるようになりました。

 

 

—— 何か印象的なエピソードはありますでしょうか? 

Joseph (Ba):ライブが始まってばかりくらい、一曲目と二曲目の時にサークルしているお客さんがいました。その中に、走りながら幸せそうな顔をしている人の顔を見ると、全員はライブでよく会った人でした。感動しすぎて泣きそうになった気がしました。

Jamlong (Gt):「好好生活」のMCタイムには下から急に、「もう人生勝ち組だからふざけないでよ」という笑いながら叫んでくれる人がいてぱっと目覚めたんです。失恋から立ち直してちゃんと生活しようという曲だから、僕からMCを話すのがさすがに変だなと思います(笑)

Lu (Vo/Gt):「在一起」を演奏したときです。この曲は10年前僕はバンドを始まる前に作った曲なので、今のファンはほぼ知らないかもしれません。特に、ワンマンに来てくれたお客さんたちは『難道我是一隻怪獸嗎?』アルバムをきっかけに僕らのことを知り始めたと思いますし、まさかこの曲を歌える人は多かったです。とても感動しました。あとは、GENさん(04 Limited Sazabys)のおかけでその日日本からのお客さんもいました。それで印象的でした。

Ni (Dr):100分で終わるのが早すぎましたよ!そのためになかなか惜しいと思っています....。いつの間にかエンディングに入ってアンコールしてライブが終わった。以前より相当の時間をかけて準備したのに、まさか一瞬で終わった感じで、なんと少し悔しい気持ちもあったんですね。今までのライブではそう思うことはなかったです。

 

 

—— 昨年粗大 Band は新たなライブ企画『Global Monster Express』(以下、GME) を開催し、初めて日本でのライブを実現しました。東京、大阪両地をまわって、ツアー中何か印象的な出来事はありましたか?

Lu (Vo/Gt):ライブハウスは基本の設備しかなくて、アーティストから持ち込みしなければいけないということが驚きましたね。

Jamlong (Gt):そういうところから見て台湾のバンドは幸せだと思います。台湾のライブハウス設備が選択肢が多く、イヤモニシステムさえも完備しています。台湾のバンドに限らず、海外のアーティストも事前にリクエストを出した機材は会場側が全部用意してくれる。日本ライブの時に See You Smile メンバーが自分の機材とアンプを持ち込んで、セッティングまでセルフでするのを見たら少し驚きました。

Joseph (Ba):日本のファンはライブへの參加意識が非常に強いという気がします。観客もライブの一部であると感じ、ステージ上ではアーティストが全力で演奏する一方で、フロアからも心を込めて參加します。一つのパフォーマンスを作り上げ、一体となることができることは素晴らしいことだと思います。胸に染みますね。

Lu (Vo/Gt):先も話しましたが、ワンマンに日本のお客さんが来てくれたこと。実は GME 日本ライブの時新幹線で 04 Limited Sazabys のメンバーに偶然会いました。 大阪に着いて車を降りる前に、GEN さんから「アルバム聴いているよ」ってスマホ画面を見せてくれて、それで Instagram でシェアしてくれました。大好きで憧れのバンドなので、このような奇遇があるなんて嬉しいです。

 

—— 日本と台湾両地のライブやバンド文化に対して、カルチャーショックもあったんでしょうか?

Lu (Vo/Gt):彼らは自分の機材車を持っていて、自分の機材を持ってツアーを巡り、自分で運転することに慣れているそうです。これは台灣では不可能なことだと思います。そして、大阪のライブにはアメリカンハンバーガーの店がライブハウスに出店してくきて、会場全体がハンバーガーの香りに包まれているのが印象的でした。音楽と料理が融和した雰囲気ができるのがとても面白いですね。あとは、ライブが終わった後には、ライブハウスの中に共演者同士への小さなアフターパーティーがあることです。

Jamlong (Gt):ライブのエネルギーには驚かされます。完全に音源とは比べないです。大阪ライブの時、共演のバンド AIRFLIP の Satoshi は疲れて声が枯れてしまったんですが、それでもライブを完遂するために一生懸命に努力しました。観客もその姿に感動し、涙を流していました。本当に胸に迫ります。ミュージシャンは 200%の力を注いで表現するのが、それは演奏技術を別にしても素晴らしいパフォーマンスでした。

 

 

—— GMEのツアーコンセプトは「世界へ踏み出す第一歩」ということですね。今年は再開催する予定はありますか?挑戦してみたい国はありますか? 

Lu (Vo/Gt):東南アジアですね。インドネシアかタイか。東南アジアのインディーズシーンでは、メタルやパンクなどリズム強めのジャンルが人気というイメージをしているので、ポップパンクが好きそうな方が多いと思います。去年の GME で仲良くしてくれた日本のポップパンクのバンドも多かったんですし。もちろん、アメリカも行ってみたいです...。いつか、GME を小さなフェスの形で作れたら最高ですね。

 

 

—— ご自身の「ポップパンク」はなんでしょうか?

Lu (Vo/Gt):Sunrise Skater Kids は「Pop Punk Pizza Party」という曲で、「I could never be the cool kid, why'd I have to be so stupid?」(かっこよくなれないのに、なんてそんなバカなことをやり続けているか?)というリリックがあります。ポップパンクは歴史背景のパンクミュージックのように政府や社会体制を反抗することではなく、個人生活と感情をコアにして自分自身を反抗するものだと思っています。

Joseph (Ba):ポップパンクはライフスタイルです。よりポップな元素を取り入れ、異なる媒体で僕らの生活態度と理念を人々に伝える方法だと思います。

Jamlong (Gt):本格のパンクミュージックではないとも言われているかもしれないが、やはりこのジャンルで僕の音楽を続きたい。この考え自体はとてもパンク的じゃないか?僕はそう思います。

 

—— 今年は結成十周年ですね。まもなく粗大 Bandの次のステップへ進んで、これからの展望は何でしょうか?

Ni (Dr):まずは新曲を作りたいです。それから次のことを考え始めようと思います。

Joseph (Ba):粗大 Band で僕のことを知ってベースのレッスンに来てくれる人がいたら嬉しいです(笑)粗大 Band でより多くのステージに上がって、世界の風景を見たいです。そして粗大 Band を通じて、同じくポップパンクが好きなお友達がもっとできたらと思います。

Lu (Vo/Gt):新曲を完成したく、新しいステージを上がりたく、更に大きい会場と国にチャレンジしてみたいです。粗大 Band がより強く成長することを願ってます。

Jamlong (Gt):音楽面でより高い水準を達成することだけではなく、マンダリンで作った粗大Bandの音楽は言語の壁を超えて伝えるように頑張ります。少しでも影響力のある存在になって、台湾ではこのジャンルをより多くの人に知らせたいです。

 

 

—— 最近お気に入りの音楽作品かミュージシャンはいらっしゃいますか?おすすめして下さい。 

Lu (Vo/Gt):04 Limited Sazabys!

Ni (Dr):最近は Creep Nuts を聞いています。ライブを見てみたいです!

Jamlong (Gt):日本ツアーの時、同じくポップパンクバンドの POT と UNMASK aLIVE と仲良くなりました。彼らの音楽をおすすめしたいです。

 

—— 日本の視聴者へメッセージを一言いただけますでしょうか。

Lu (Vo/Gt):台湾のポップパンクバンド「粗大 Band」です。いつも楽しいライブを作りながら、ポジティブなエネルギーを周囲に伝播させようと考えています。これからも日本へライブしに行きたいです。機会があれば、ぜひ一度僕らのライブを見に来て楽しんでください!

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インタビュー・テキスト:Keitei Yang

撮影:Miao Chia Shu (MIAO’s photography)

取材協力:和平咖啡館 Peace Cafe