大比良瑞希×鄭宜農(Enno Cheng) 日台スペシャル対談 【前編】

Oct-23-2021

今回のスペシャル対談には台湾からチェン・イーノン、日本から大比良瑞希に参加してもらいました。

いずれもシンガーソングライターとして、それぞれの国で高い評価を得ており、そして活動そのものがユニークという点においても共通しています。今回、2人はまったくの初対面ですが、おそらくお互いのことで共感できるんじゃないかな?という期待を込めて対談を依頼しました。さて、どうなりましたでしょうか...


―――イーノンさんにお聞きします。大比良さんの音楽を聴かれましたか?もし聴いたのなら、その印象を聞かせてください。

イーノン:昨日ずっと大比良さんの音楽を聴いていました。一番好きな曲は「アロエの花」という曲です。この曲のギターのイントロのフレーズが特に好きで、ずっと記憶に残っています。とてもフックになっていると思います。そしてリズムが明るいと感じました。聞いた時に日本の景色を思い出しました。

―――日本の風景を思い出したとおっしゃっていますが、イーノンさんは日本に来たことがあるんですか?

イーノン:コロナになる前は、一年に2回くらい日本に遊びに行ってました。今は行けないから、また大比良さんの音楽を聴いていて、日本に行きたくなりました。

―――日本のどういう景色が浮かんだんですか?

イーノン:まず私は、色に対してとても敏感なのですが、毎回、日本に来る時に、青と緑に鮮やかさを感じています。台湾では、なかなか、撮影を通して、この2色にそんな鮮やかさを感じられないので、日本特有な色なんだなと理解しています。大比良さんの曲を聴いているとすぐにそんなことを思い浮かべました。

そしていつも日本のデザインの本とか、カラーカットとかをいつも研究しているのですが、日本で見てた色は、原色ではなくて中間色な印象です。大比良さんの曲を聴いているとそんな鮮やかな中間色である日本の空を思い出したのです。その色が好きで、曲も耳に残りました。同じく音楽を作る人として、影響を受けますね。

大比良:嬉しいです。ありがとうございます。

―――大比良さんはイーノンさんの音楽いかがですか?

大比良:私も、このお話をいただいてから、イーノンさんの音楽をたくさん聴きました。心にスッと入って くるというか、丁寧な気持ちになれる曲ばかりで、単純にとても好きになり、知れて嬉しい気持 ちになりました。なんというか、声はすごく優しくて琴線に届いてくるような温度で、それに対し てアレンジは、とても優しく包んでいく曲もあれば、毒々しさもあるような尖ったリフを用いて いる曲もあって、そのバランスが、私の好きなツボに刺さってきました。ルーツやどんなジャンル の音楽を聞いてきたのか、も気になりました。MVやジャケットも好きなタッチなので、いつもど んなところからインスピレーションを受けているのか、興味を持ちました。

イーノン:小さい頃からロックを一番よく聴いてきましたが、両親が割と変わってて、いわゆる国内のメジャーなポップスではなくて、長渕剛さんの曲が毎日、家で流れていて、母親は森山直太郎さんも好きでした。その頃、私は山奥に住んでいましたが、山道を歩いて帰りながらこういう音楽を聴いてきたんです。同じ頃、ちょうど海外の文化が台湾に大量に流入される時期があって、私は台湾の音楽より日本やヨーロッパ、アメリカの音楽を聴いていました。アメリカだとNIRVANAやメタリカを聴いていましたね。その頃の影響もあって、自分の音楽性の中でもアコースティックなのがある一方で、すごくラウドな表現もあったりします。

家族の影響で大人になっても一番好きな歌手は宇多田ヒカルです。今は彼女の音楽を聴きながら、エミネムも聴いています。

いろんな音楽が自分のルーツにあるので、今も自分の音楽のジャンルとかコンセプトとかは、なかなか決められないです。毎回新しい作品を発表するたびに、その一回限りのコンセプトを決めるようにしています。

―――なるほど

大比良:面白いですね!少し懐かしい感じもしてたような感じがあったり、映画の中にいるような感じ があったりしていたので、宇多田ヒカルさんのバランス感や、日本からも影響を受けているのが少 しわかるような気がしました。

―――イーノンさんのプロフィールを読んだら、一時期ギターに集中して練習、トレーニングをしたっていうのを読んだんだけども、なんで活動を中止してまで、特訓しようと思ったのか気になりました。

2人ともギターっていうのが軸になっていて、大比良さんもギターっていうのが軸になっているので、ちょっとそこを聞きたいなって思っています。

イーノン:ギターは縁だと思っております。っていうのも最初に音楽を始めたきっかけがギターなんです。

元々ルームメイトがギターを弾いていました。その子のギターを借りて、習いだしたんですが、結局私の方がルームメイトよりも長く続けました。あの頃はギターを弾きながら、いくつかのコードを勉強したら、野心が出てきて、さらに曲を作ろうとなったんです。ただ、その時に作った曲は今はすごく恥ずかしくて聴けないですが(笑)。大学から本格的にギターをメインに創作を始めました。バンドを組んだりして、新しいアプローチも試みました。例えば、ピアノで曲を作ったり、ビートを最初に作ってから曲を作ったり、シンセを使って曲を作ったりとかしていましたが、とにかくギターは毎日弾いていました。ギターは私にとって、一緒にいて、長い時間いて、慣れすぎて、一回別れて、別れたら、もう一回復縁して、復縁したら、なるほど、あなたはそういう人だ、と新しい発見があって、この楽器に対して、また新しい考えがあって、ギターはそういう存在だと思っています。

―――エレキギターですか?

イーノン:全部。アコースティックも含めて全部です。

―――なるほど。

イーノン:それでもまだ足りないなと思う部分もあって、さらに学んで、ギターを弾き続けています。


というわけで前編はここまで。主にイーノンさんのルーツを中心に語っていただきました。イーノンさんの日本への愛情が音楽だけでなく、色彩にまで及んでいたのは驚きでした。日本にいるだけだと、まったく気付かないことが海外の人の目線でわかることがあるんですね。後半はどんな話が聞けるでしょうか?続きをお楽しみに!