The Dinosaur’s Skin が謳う、1億年後も途切れないラブストーリー

Oct-27-2021

2020年末、突如として現れたこの謎のユニットは、絶滅した恐竜仲間を追悼するために「All My Friends Are Dead」のデモ曲をYouTubeで発表し、瞬く間に台湾のインディ音楽界を席巻した。「隕石衝突によるタイムスリップで現代にやってきた、今世紀にわずか2匹だけ現存する恐竜」だという彼らは、本当は何者なのか?

正体不明の男女2人組 The Dinosaur’s Skin は、「恐竜の皮」というバンド名通り、恐竜マスクを被り演奏する。その姿、多彩なメロディセンス、恐竜時代を背景とした独創的な英文の歌詞で注目を浴びている。Bedroom pop、Dream pop、Synth pop や Lo-fi の要素を融合し、ゆがみながらも心地よいグルーヴに異なるジャンルとアイデアが入り混じる。耳障りのいいポップネスで人気を集め、台北のサーキットフェス「意識不能招待所」や国立台湾博物館の古生物館でライブが実現、独自のエネルギーと演奏の魅力で観客を魅了した。

The Dinosaur’s Skin は2021年6月にようやく待望のファースト EP『Millions of Years Apart』をリリースした。今回 Taiwan Beats はメンバーの T-rex と Triceratopsにバンド結成から現在に至るまでの経緯と新作に込められた思いを、じっくり語ってもらった。

Triceratops:コンニチハ、The Dinosaur’s Skin です!音楽のジャンルはジュラシック・ポップです!

T-rex:(咆哮)

―――元気なご挨拶、ありがとうございます。ファーストEPリリースおめでとうございます!まずは、バンド結成から聞かせてください。The Dinosaur’s Skin はどんな経緯で結成されたバンドなんですか?

Triceratops:T-rex との付き合いは6500万年前からですが、音楽を始めたのは割と最近です。タイムスリップで台北に来たばかりの時は、何のアイディアもありませんでした。それから少しずつ音楽のことを知り始めて、2020年にようやく初作品の「All My Friends Are Dead」をリリースしました。結成期間は⋯⋯そうですね。2018年〜2020年の間かな!(笑)

―――何かきっかけで音楽を始めたんですか?

T-rex:台北に来て初めて聴いた曲は、アメリカのシンガーソングライター Dayglow の「Dear Friend,」でした。「Dear Friend,」は友たちと連絡がつかなくなるというストーリーの曲です。私たちが時空を飛び越えて現代に来てみたら、恐竜の仲間はもう既に絶滅したと聞いて、その時は悲しみしかありませんでした。この曲はまさに同じ境遇にある僕らの心に響きました。今の The Dinosaur’s Skin の作風も、Dayglow からかなり影響を受けています。

―――なるほど。音楽のルーツは Dayglow だったんですね。

T-rex:そうです!もう一度、友達に会いたいという気持ちも同じだし(笑)

―――創作の目的は「残りの恐竜を見つけたい」だそうですが、今までの作品は全て哺乳類のお友達と一緒に制作していますね。Crispy脆樂團の Skippy に今作のプロデューサーをお願いし、レコーディング参加のミュージシャンも多国籍です。

Triceratops:Skippy は僕らの友人で音楽の好みも近いので、今回の作品プロデュースをお願いしました。レコーディングの演奏を手伝ってくれたミュージシャンも全員、Skippy の繋がりで参加してくれました。

T-rex:僕らは仲間を見つけたいので、Skippy と相談してこれをEPのテーマにしました。どこにいても僕らの思いが音楽で伝わるように、世界共通語の英語で歌い、各国のミュージシャンに参加してもらいました。これが一番の近道だと思っています。音楽の形で僕らの想いを記録しておけば、いつか知らないところにいる生き残りの恐竜仲間に伝わると信じています。

Triceratops:音楽で仲間を見つけられる。または、私たちの居場所を仲間に知らせることができる。どちらにしても、実現すれば嬉しいことです。

―――ハッピーな雰囲気の曲調に、友人を失った悲しみの歌詞。なぜこのような表現方法を選んだのですか?

T-rex:そうですね。僕らは、音楽を通して元気をもらうことができますよね。そして、その歌詞に耳を傾ければ、「自分は一人じゃない」ということがわかる。その過程は、完全な感情のサイクルだと思います。純粋にハッピーな曲ではないとわかっていながら共感できて、自分自身の悲しい気持ちと、メロディからもらった楽しいエネルギーを入れ替えることができます。だから、悲しければ悲しいほど楽しく歌う。良い曲はこうやって作るんだと、僕は思います。

Triceratops:T-rex は変わってますよね(笑)

―――ゲストに I Mean Us の MANDARK を迎えたアルバムタイトル曲「Millions of Years Apart」は、他の収録曲と比べてかなりロマンチックな雰囲気が漂っていますね。

Triceratops:MANDARK さんも Skippy のご紹介でした。とても素敵なミュージシャンで、人類の女神と言われるほど綺麗な方です。そして、私たちの数少ない友人の一人です。しかも MANDARK さんは鳥を飼っています!鳥類は恐竜とは遠い親戚だそうですね。だからこそ、僕たちとは親しみやすかったんじゃないでしょうか?

―――この曲を作曲した背景は?

Triceratops:ある日、人類は抱きしめあった状態の恐竜化石を2体発掘した。古生物学者によって、この2体の恐竜はなんと、それぞれ何百万年も違った世代に生きた生物だったという驚きの事実が実証された…。そう!こんなタイムスリップ系のラブストーリーです。

T-rex:「Millions of Years Apart」は今まで書いた曲の中で、一番美しいラブソングです!時が流れて、違う時空の中にいても、彼らは変わらず愛し合い、お互いの側を離れずに、そのまま化石になった。本当の愛とはこのようなものではないでしょうか?

―――台湾では、五月中旬から「ステイホーム」を余儀なくされていました。お二人にとっても初めての状況でしたね。どう過ごしていましたか?

T-rex:ずっと泣いてました。好きな音楽を演奏できないし、たまに新しい恐竜の化石が出土したというニュースを観るたび悲しみしかありませんでした。また友たちが死んだんだ。Big John…。

Triceratops:家で音楽を作ったり、ネトフリを見たりしていましたね。今回のEPもその期間にできたものです。

―――その期間に出会った作品で、何かオススメがありますか?

Triceratops:私は最近、恐竜の百科事典を読んでいます。私たちのいた時代にはなかなか想像できないんですが、現代社会の人類は恐竜のことを学問として研究し、百科事典まで出版しています。自分とは違う時代の恐竜を知ることができて嬉しいです。

T-rex:ネトフリといえば、「宇宙よりも遠い場所」というアニメを見ました。4人の女の子が南極を目指す物語です。人類社会とその心理、勇気を出して夢を追いかける精神を描き出しています。良い作品だと思います。オススメしたいです。

Triceratops:あと「BEASTARS」も面白いですね!草食と肉食動物の共生社会の中で、色々なソーシャルイシューを描くストーリーです。

―――この先、日本へ行けるとしたら、ライブ以外に何かしたいことがありますか?

T-rex:日本の福井に行きたいです!福井には恐竜博物館があるそうですね?

Triceratops:フクイラプトルが見たいです!

―――日本の読者に、新作の中で一番オススメの曲を教えてもらえますか?

T-rex:一番聴きやすい曲としてオススメなのは「Millions of Years Apart」です。でも実は、このEPは3曲入りなので、全曲再生時間が10分もありません。10分ぐらいのお時間でこのEPを全部聞いて頂ければ、きっとあなたの人生は変わります(笑)

The Dinosaur’s Skin 恐龍的皮『Millions of Years Apart

2021年6月30日

配信:
https://dinosaurskin.lnk.to/MillionsofYearsApart

収録:

  •  Jurassic Ride
  •  Millions of Years Apart (feat. MANDARK)
  •  All My Friends are Dead

影像提供:The Dinosaur’s Skin
日本語校正:黒田羽衣子