Four Pens四枝筆インタビュー、4年ぶりシングル作品に込めたのは苦悩の世界からの昇華と新たに一歩を踏み出すもがき

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2011年の結成から、透明感あふれるアコースティックサウンドと切なくも心を揺さぶるソングライティングで台湾のみならず、日本のインディーミュージックファンにもその名を知られるFOUR PENS四枝筆。スタジオ録音作品としては4年ぶりとなるシングル「美麗的人」(美しい人)、「遠方」、「冰山」が立て続けに配信リリースされた。これまでのフォーキーなタッチの魅力はもちろん、豊穣なバンドアンサンブルで彼らの新たな一面も伺える意欲作となっている。Bibo、Candace、Sunnyの三人に新曲に込めた思いやインスピレーション、そしてコロナ禍の中で考える現在の心境を聞いた。

──過去の楽曲でもストーリー性のあるコンセプチュアルな世界観が際立っていますが、「美麗的人」もまたある種の寓話性を感じる楽曲ですね。

Bibo:「美麗的人」は一番最初のデモの段階では英語詩で、「自ら命を絶つ」ことについての歌だったんです。でも、行為そのものの悲劇的な面ではなく苦悩や冷酷な世界からの解放として、昇華したいと考えるようになって。

──なるほど。その元となった英語詩を拝見しましたが、偶然見かけた写真や映画のワンシーンのような物語の断片のような印象を受けました。具体的なインスピレーションはありますか?

Bibo:最初に頭に浮かんだのは「橋の上に乗り捨てられた車」のイメージでした。僕は台北の外れに住んでいるので市街へ行く時は橋を渡るのですが、橋の傍らに乗り捨てられた車をよく見かけるんですよ。それで不思議に思っていたんです。持ち主は一体どこに行っちゃったんだろう?って。そこから最初の「美麗的人」のイメージを膨らませました。

──どのようなプロセスを経て最終的な現在の「美麗的人」に?

Candace:デモのアイデアを元に三人でミーティングを繰り返すうちに、今の世界観がクリアになりました。私たちの製作プロセスはこの話し合いの時間がいつもとても長いんですよね(笑)。

Bibo:僕はライターで、彼女たちは編集者って感じの役割ですね(笑)。歌詞に新しい感覚を吹き込むために、世界各地の死生観なども研究しました。四季の移り変わりや輪廻といった考えが現在の世界感のベースになっています。

──MVにもその感覚がはっきりと読み取れますね。続いて第二弾の「遠方」について伺いますが…

bibo:感想を聞きたいな!

──逆に聞かれるとなかなか難しいですね…笑。「別れ」をコンセプトにあると思いますが、その別れの対象は聞くものに委ねられている感じがします。

bibo:「遠方」はラブソングと捉える人もいるし、自分ともう一人の自分との物語と考える人もいるようです。一大決心して一歩前に進む勇気、自意識との間の「もがき」の歌とも言えますね。自分の中ではそんなつもりで制作したのですが、いろんな反応がある曲で、とても興味深いですね。

──サウンド面での新たな変化も気になるところです。フォーキーな魅力は活かしつつ重層的なバンドアレンジで惹きつける「遠方」はのFOUR PENSを音楽性を知るファンからも新鮮なリアクションがあったのでは?

Candace:バンドを始めた2011年からすれば、私たち自身も一音楽リスナーとして聞く音楽性も広がったのは確かですね。Biboのデモを聞いて私たちが感じ取れる音の世界が以前より幅のあるものになりました。以前はギターとキーボード、自分達のできる範囲でのアレンジが基本でしたが、リスナーとしての耳を通してアレンジの幅も広がったと思います。いつも録音作品においては普段のライブ演奏と違った魅力を引き出したいって思いもありますし…。あと実は私たちにはいつもどこかに「バンド・ドリーム」への憧れがあるのかも。

──「夏季悲歌 Summer Tragedy」に引き続き、バンドGreenEyesでも知られる王昱辰(Yuchain Wang)をアレンジャーとして起用していますね。彼がFOUR PENSに与えるケミストリーとはどんなものですか?

Sunny:私たちのデモを聞いて老王(王昱辰)がギターでアレンジのアイデアを出していくんですが、私たちのデモはアコースティックでシンプルな録音なんですけど、老王はそのメロディーやアレンジの中に潜むグルーブを見つけ出すのが本当にうまいんです。

Candace:老王は私たちの大学サークルの先輩なんですけど、在学中は実際あまり交流はなくて。でも今では私たちの音楽のことを誰よりも良くわかってくれている人ですね。

──続いて三曲目の「冰山」ですが、こちらはもともと神戸のグッゲンハイム邸で収録されたライブセッションEP「柔軟的海」に収録されていた同名の曲の再録です。「B15Z」という曲名にする案もあったそうですが、この曲についてもお聞かせください。

Candace:「B15Z」も、実は南極の一番大きい氷山の名前なんです。

Bibo:数年前に温暖化が原因でカナダで海沿いの小さな町にある日突然たくさんの氷山が漂着して見物客が押し寄せたっていうニュースを見た記憶がとても印象に残ってて。そこから着想を得ました。

Candace:観光客が眺める氷山を人に見立てて。 美しい対象として見られているけど、もしかしたら心の中は溶けて今にも崩れ落ちそうな…そんな感覚ですね。

──FOUR PENSのこれまでの作品のビジュアルイメージは「写真」の印象が強かったのですが、今回のBihua YangさんのイラストレーションとアニメーションのMVがとても新鮮でした。

Bibo:Bihua Yangは僕の勤め先の元同僚で、今はヨーロッパに拠点に活動しているアーティスト。一昨年EVERFORと企画した台湾ツアーのメインビジュアルを彼女に作成してもらってから、また一緒にコラボレーションしたいという気持ちがずっとありました。彼女の絵はどこか時間の概念が曖昧で、心の平穏な感覚を導き出してくれる感じがするんだけど、世界観がピッタリ合ってるんじゃないかと思って、また彼女にオファーしました。

Candace:写真だと「楽曲=被写体の物語」というイメージが強くなることも。今回はストーリーをリスナーの解釈に委ねて、想像の幅を広げたかったから、彼女の作品がとてもぴったりだと思ったんです。

Bibo:彼女とのコラボレーションはとても心地いい作業なんです。こちらが説明しなくても、僕らの意図を以心伝心でちゃんと汲み取ってくれるんです。

Sunny:デザイナーもフォトグラファーも大学の先輩。才能に溢れた人たちに囲まれているので、私たちは本当にラッキーです(笑)

──連続リリースはこの後もまだ続くとのことでニューアルバムへの期待も膨らみます。ファンも新曲をライブで聴けるその時を心待ちにしていたところですが、予想だにしなかったコロナ禍で私たちを取り囲む景色が一変してしまいました。ここ数ヶ月の一連の流れの中でどんな思いで過ごしていますか?

Candace:五月には台北で日本のあるバンドとのライブも決定していたのですが、それも中止になってしまったり…。直接的な影響があるのでやっぱり思うところは多いですね。

Sunny:私たちの日本版リリースを支えてくれていたレコードストアも実店舗が閉店してしまったり…。日本のレーベルやサポートしてくれている方々は、今や私たちにとっては離れた家族のような存在ですから、やっぱり心配です。

bibo:instagramライブやオンラインの活動を僕らも始めていますが、日本のオーディエンスの反応も直に受け取れますし、これまでの交流が途切れる心配はないと思います。オーディエンスとの新しいコミュニケーションを見出す動きにはポジティブで希望も感じています。

──最後にファンの皆にメッセージを!

Sunny:今はまだいつ行けるかわかりませんが、次のツアーではこれまで足を運べなかった場所にもたくさん行きたいと考えています。

Candace:今を乗り越えた先にもっと素晴らしい世界があると信じています。私たちも今アルバムに向けて動いています。連続配信リリースを楽しみに聴いて欲しいですね。

bibo:今の状況は「太陽がないときには、それを創造することが芸術家の役割である。」という言葉を思い出します。僕らの音楽も誰かにとってそんな存在でありたいと願っています。

作者