夜明けを信じ続ける Elephant Gymが語る「CRACK OF DAWN」

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世界のステージで活躍する、台湾・高雄出身のスリーピース・バンド Elephant Gym。初期はインストゥルメンタルを基調としていたが、近年ではジャズ、フューチャーソウル、インディーロック、シティポップ、フィルムミュージックなどを取り入れ幅広く自由な音楽を展開している。洗練された楽曲で台湾から世界へ羽ばたき、アジアで最も影響力を持つインディーバンドのひとつとなっている。

メンバーにとっては複雑な思いでいっぱいの2020年。1月の日本ワンマンツアーを最後に世界100公演以上のワールドツアーを終えて、ようやく半年の充電期間に入った3人。そこにあったのは「コロナ」という苦境に陥った世界だった。世界中のミュージックフェスに常連ラインナップとして呼ばれ、海外出演に慣れたElephant Gymにとって、完全に想像できない事態となった。

そんなコロナ禍で、日本限定販売の 4th EP『CRACK OF DAWN』が完成した。前作から約2年半ぶりで、2021年7月にリリースされた新譜は、toeの楽曲をサンプリングした「Go Through The Night」を収録するほか、cinema staffの三島想平が作詞を手がけた日本語版の「Dear Humans」、ベースボーカルKT Changがピアノソロを担当する「Dreamlike」、吹奏楽団との共同制作「Wings」など、スリーピースバンドの可能性を大きく広げ、バンドの音楽性を自由に発揮した全4曲を収録している。Taiwan Beats では、今作のアルバムに「黎明(夜明け)」という中文タイトルをつけて、「希望を持ちながら前に進む」という思いが込められたこの新作について、Elephant Gymの3人に話を聞いた。

オンラインインタビューでの Elephant Gym 3人

── 前作から2年半ぶりの新作発表ですね。生活や心境に何か変化がありましたか?

Tell Chang(以降、Tell):生活での一番大きな変化は、僕もChia-Chinも結婚したことですね。自由に時間が使えたこれまでと比べて、今は、家族との時間を多く作るようになりました。

Chia-Chin Tu(以降、Chia-Chin):そうですね。家族の事を考えて一緒に過ごす時間が増えたので、以前と比べると、創作には2倍の時間が必要になったように感じます。

KT Chang(以降、KT):やはり、2020年が分岐点ですね。「Underwater」ワールドツアーと日本のワンマンツアーが終わった直後、コロナの影響で世界中のイベントがキャンセルになりましたが、私たちのライブスケジュールには特に影響がありませんでした。その後、一度も海外に行ってないという、私たちにとっては滅多にない状況になりましたが、でも台湾にいたことで、劇団や吹奏楽団とのコラボが実現し、新しいチャレンジができました。

── 今回のEPは日本限定盤の形でリリースされたんですね。なぜですか?

Tell:コロナ前の僕らは、年に3回は日本へライブをしに行きました。今は行けなくなり、2年半も作品をリリースしていなかったので、Shoさん(所属レーベルマネージャー吉本翔)は、日本のファンがElephant Gymのことを忘れてしまったら、どうしよう…と、ずっと心配してくれていたそうです。Shoさんから連絡があって、「最近日本も台湾も、感染状況が深刻で、社会の雰囲気も重くなってきたので、Elephant Gymの音楽でみんなに少しでも元気を出してもらいたい。何か新曲があれば日本でリリースしませんか?」って、お話をいただきました。

「CRACK OF DAWN」は夜明けの暁光という意味で、雲の切れ間から暗闇へ差し込む光を指します。このタイトルを付けた理由は、僕たちの音楽を通じて、国境と言葉の壁を超えて日本のみなさんの力になれたらいいなと思ったからです。

Chia-Chin:去年の4月頃、日本の音楽業界はコロナでライブの自粛やキャンセルが相次ぎ、大きな被害を受けました。僕らはそれをサポートするため、新しいグッズや楽曲、昔のライブ映像をリターンとしてクラウドファンディングを行いました。集まった資金は、僕たちが出演したライブハウス、訪日時のサポートをしてくれたイベンターと医療関係団体に寄付されたそうです。想像以上の反響をいただきました。これまでElephant Gymのことは知らなかったけど、クラウドファンディングで初めて知ったという人もいたそうです。こんな時期ですが、僕たちの音楽がポジティブな気持ちを伝えて、それで喜んでくれる人がいれば、それが一つの幸せになると思います。

Elephant Gymとマネージャーの吉本翔

── 制作期間中に何か印象的なことがありましたか?

KT:「Dear Humans」を日本語に訳して歌ったことが一番印象的でした。私はベーシストとして活動してきて、今まで作曲のために歌ったことはありましたが、本気で自分のことをボーカリストだと思ったことはありません。でも、歌が得意じゃないから、と逃げ続けることはもうやめようと思い、ようやくボーカルレッスンを受け始めました。

日本は独自性を重視するので、海外アーティストが日本に進出するときには、日本盤にボーナストラックを入れますし、歌詞も日本語に訳します。「Dear Humans」という曲の日本語版を制作することを決めてから、誰か歌詞をアレンジして、誰が歌うか、結構悩みました。最終的には私が歌い、歌詞のアレンジをcinema staffの三島想平さんにお願いすることにしました。

三島さんから日本語歌詞のバージョンをいくつかもらって、私はできる限り原曲に近いものを選びました。このプロセスには他のメンバーは参加せず、私が直接やりとりしました。何故なら、日本語版の歌詞をメンバーに確認してもらうためには英語に翻訳しなければいけないし、どうせ最後はKTが歌うから、KTに全部任せたほうが早いって二人に言われて…。

そして、私の日本語発音をもっとよくするために、Shoさんは知り合いのアーティストにお願いしてデモを録ってくれました。凄くよかったのでそのまま使えばいいのにと思いました(笑)

Chia-Chin: KTがピアノソロで書いたDreamlike」という曲があります。この曲について僕から一言、言わせてもらうと、「ドラムの僕がいなくてもバンドはうまくやっていける」です。ドラムを完全に抜いても、この曲は大成功でした。よかったです。

── 「Go Through The Night」は toe の楽曲をサンプリングしてアレンジした曲ですね。そのきっかけは?

Tell:共演したり一緒に作曲しようって、以前からtoe と話していたのですが、コロナの影響でしばらく動けなくなりました。でも、去年3月にオンラインで共演する機会があって、せっかくだから、楽曲をサンプリングしてもいいですかって本人に聞いて、こちらからいくつかのサンプルを送ってから、やっと許可をもらいました。

toeはギター二本編成のバンドなので、多くの曲にアコースティックギターを使っています。なかでも「Two moons」はアコギをメインにした曲です。Elephant Gymはアコギを使うことがあまりありません。そこで今回は、敢えてこの曲を選びました。僕は普段ギター担当ですが、この曲ではtoeのアコギ演奏を活かして、僕はピアノを弾きました。いつか、toeと共演の機会があればこの曲を一緒に演奏したいですね。

── インディーズ音楽を意識し始めるきっかけになったアーティストは?

Tell:陳綺貞(Cheer Chen)です。その頃、陳綺貞はMagic Stone(魔岩唱片)を離れたばかりで、Team Ear Music(添翼音樂)から『華麗的冒險』をリリースしていたはずです。一度カフェで陳綺貞が自主作品としてリリースしたCDを見て、メジャーレーベルを頼らなくてもいいんだ、と初めて「インディーズ」を意識しました。陳綺貞は今でも変わらず、インディーズの形で作品を作っています。

KT:東京事変!活動時期ごとの音楽があって面白いし、作品によってバンドイメージも衣装も変わります。私の憧れです。

Chia-Chin:透明雑誌。高校の時に僕はよく、音楽が好きな友人のうちへCDを聴きに行っていて、彼のおかけで台湾のインディーズバンドをたくさん聞くことができました。透明雑誌の「凌晨晚餐」を聞いたらとても気に入ってしまって、台北の大学へ入った後も、時間ある時には必ずライブを見に行っていました。

── 今の自分にとって「音楽のコア」となっている曲は何ですか?

TellKT:Lampの「A都市の秋」!この曲は何でもありで、構造も管楽器の入り方も素晴らしい。今でもよく聴き直して作曲の参考にしています。

Chia-Chin:toeの「song silly」。この曲は昔、僕がよく知っていたtoeの雰囲気とは全く違っています。あ、こんなに長く続いてきたバンドでも、枠を壊して自由に創作できるんだと。本当にかっこいいと思います。今までElephant Gymも同じ気持ちで創作活動を続けてきたので、この曲を自分の代表曲にしたいです。

── 今作で一番オススメの曲は何でしょう?

「Wings」がオススメです!日本盤以外ではまだ公開されてないですね。この曲は僕たちと高雄市吹奏楽団とのコラボ曲で、バンドとして初めて大規模な編成で作った曲です。是非聞いてみてください。

Elephant Gym『CRACK OF DAWN』
2021年7月21日(水)

配信
https://linkco.re/P0XfgF8U

Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/B094LC6K73/

Tower Records Online
https://tower.jp/item/5198410/CRACK-OF-DAWN


影像提供:Elephant Gym
日文校正:黑田羽衣子

作者