日本と台湾のバンド交流の企画が決まった時に、日本側の最初のピックアップアーティストとして、まずAnalogfishにお願いしようと考えていた。その理由はSpotifyで聴かれているAnalogfishのリスナー層の特殊な傾向だ。日本国内で活動しているほとんどのバンドのリスナーが日本人なのに対して、Analogfishの場合、国別だともちろん日本が一番多いのだが、都市別に見るとなんと台北が一番多い。特に何かしら海外向けの施策を打ってるワケでもないのにもかかわらずだ。ちなみに2位がジャカルタで3位がバンコク、4位になってようやく東京になるのだが、つまり東南アジアの都市部で人気が高いことが窺える。本人たちもまったく狙ったわけではないので、多少の戸惑いは感じつつも、それでも新しいリスナー層が着実に付いてきているのは実感しているようである。実際、活動は20年を超えた現在でも常に音楽的進化は止まらず、今のところの最新作になる『Still Life』(2018年)もコーラスワークを存分に活かした一筋縄に行かないクオリティーの作品が並び、海外で評価が高いのも十分納得ができる。そんな彼らに台湾で気になるバンドがいないか聞いたところ、さっそく返事が返ってきた。「台湾のThe Chairsっていうバンドがプレイリストに僕らの曲入れてくれてるんですよ」と。
プレイリストに入れてもらったことから興味が湧いて、逆にThe Chairsを聴いてみたところ、彼らもかなり気に入ったようで、それならばということでThe Chairsに連絡を取って今回の企画が実現に至った。本来であれば、対面でお互いの音源でも聴きながらの対談が理想ではあったが 2021年4月現在のコロナ禍の状況をかんがみて、オンラインでの開催となった。
── Analogfishのメンバーからプレイリストに入れてくれたことを聞きました。The ChairsのみなさんはAnalogfishのことを以前から知ってたのですか?
The Chairs:去年、Analogfishの"Sophisticated Love"をたまたま耳にしたんです。
── ちなみにThe Chairsのみなさんって年齢いくつなんですか?
Benson:全員27歳です。高校時代の同級生なんです。(日本語で)
── へえーってか日本語上手(笑)。だとするときっとAnalogfishって上の世代にあたるから、それを好んで聴いてるっていうのが意外でした。
Jing:音楽の聴き方として、あまり世代は意識してないので今の音楽だけじゃなくて昔の音楽も聴いてますね。Analogfishに関してだと"Sophisticated Love"のイントロでヤラれた感じです。
── そもそも日本のポップスを聴く習慣があるんですか?それはあなたたちの周辺を含めて。
Jing:おそらくみなさんが想像されているよりたくさんの台湾の人が日本のポップスに触れていると思いますよ。Bensonは昔から日本のアニメの曲を聴いていて、それがきっかけで日本の音楽に触れる人も多いんじゃないかなと思います。
── じゃあテレビとかで初めて聴いたっていう人が多いってことなんですかね?
Jing:だと思います。僕たちの周りの人たちも日本のアニメが大好きで、最近だと「進撃の巨人」や「鬼滅の刃」はこちら台湾でもすごい人気でBensonはその流れでLiSAさんが好きです(笑)。他にも周りからのオススメもあってサニーデイサービスやcero、Lampなどのグループを知って、よく聴いてます。
── そうなんですね、僕はThe Chairsって勝手に欧米の音楽が元になってると思ってたので意外でした。
Jing:作品作りという意味においては欧米の音楽の影響を受けていると思います。特にビートルズやピンク・フロイドなどの昔のロックなども好きなので。
── AnalogfishのみなさんはThe Chairsを聴いた時にどういう風に感じましたか?
佐々木:僕は食事しながら聴いてたんですが、日本語の歌詞の曲が聴こえてきて「あれ?言葉は日本語だけど日本の曲じゃないなぁ」っていう新鮮な感じがあって、すごく良かったのとニューアルバム『Real Love Is...』の「棉花糖駱駝」が好きです。
下岡:僕も彼らの新しいアルバムを聴いて、日本のシーンとも繋がっているなあという印象を受けました。おもしろいなと思いました。
Zhong:僕らのニューアルバムが日本のシーンと繋がっているように聴いてもらえるのは驚きなのと、もしそうだとしたらとても嬉しいです。
下岡:いや、繋がると思いますよ。
Jing:よかった(笑)
斉藤:僕は下岡が言った点と同様なのと、時代の目線を持っているなと感じました。あと"Rollin' on"っていう曲が好きです。
Jing:ありがとう(笑)ぜひ台湾に来て、ライヴ観てもらったり、台湾の文化にも触れていただきたいですね。
── Analogfishは台湾でもやっていけそうですか?(笑)
The Chairs(全員):はい、まったく問題ないです!
Analogfish(全員):(爆笑)
── じゃあ、コロナが落ち着いたら活動拠点を台湾に移しますね!(勝手に返事)
The Chairs(全員):Welcome!(笑)僕らも日本に行きたいです。
── ところでThe Chairsのやってるような音楽は台湾でいうとどんなジャンルにカテゴライズされるんですか?台湾のジャンルってどうなってんのか気になってて。
Jing:インディーズ...になるのかなあ?自分たちでもジャンルっていう区分けについては意識したことがないんですよね。どのジャンルに入れてもおかしくないっていうか、自分たちでもいろんなジャンルに挑戦しているので。敢えて言うならインディーズっていうしかないかなと。
── じゃあ昨年リリースされたアルバム『Real Love is...』はある意味「The Chairsっていうバンドはこういう音楽です」っていうのがカラーとして、より明確に出された作品だと感じたんだけど、次回作はまたぜんぜん違うカラーになる可能性もあるってことなんですかね?
Jing:可能性はとてもあります。
── じゃあまだまだいろんなことをやりたいっていうことなんですね。
Jing:はい、とはいえ世間で認知されているソフトなイメージというのは崩さないで、例えば突然ヘヴィーロックをやったりとかそういうことはありません(笑)。でも、次の作品でサイケデリックな要素は足していきたいなと考えています。
── なるほど。さっき世代の話をして、あまり関係ないって言ってたんだけど、本当にThe Chairsって若いのに深みのあるサウンドを奏でているなと感じました。
Jing:確かに同年代の人たちが聴いてる音楽と比べると僕らが聴いてるのは、ちょっと大人っぽいかもしれません。
下岡:僕がThe Chairsで興味深いのはアルバムごとに出てるカラーっていうのがすごくはっきりしてるなっていうところです。
Zhong:2枚目のアルバムは制作時に聴いていたヨーロッパやタイのインディーズの影響が滲み出てたと思います。
Jing:僕もAnalogfishがアルバムごとのカラーをちゃんと持っているなと思って聴いてます。最新作はどういう音楽に影響受けたんですか?
下岡:その最新作『Still Life』っていうアルバムに関してだと、そのときメンバーとよく聴いてたのはUnknown Mortal OrchestraとかNonameとか
Jing:Unknown Mortal Orchestra も No Name も聴いたことないなぁ...。
下岡:素晴らしいのでぜひ聴いてみて!特に『Telefone』っていうアルバムが。んで、僕らはもうそれなりにキャリアあるから、元々パンクバンドみたいな感じのところからスタートしてるので、The Chairsは無いって言ってたけど、僕らは次回作がハードコアになるかもしれない(笑)
The Chairs:(笑)
Benson:僕もちょっと好きです(笑)
Analogfish(全員):(笑)
── The Chairsは日本でライヴやったことあるんですか?
Jing:本当だったら去年のツアーで行ってるはずだったんだけどコロナで中止になってしまったんです。今回が初来日の予定だったんですよね。とても残念です。
── 今、台湾のコロナの感染状況ってどうなんですか?
Zhong:かなり感染者数も少なくなって、去年はそれなりにイベントがありました。現在も大きめの野外フェスは予定通り開催されている状況です。日本はいかがですか?
下岡:日本は感染者数がまた増えてきたので、ライヴも中止になったり、やれたとしてもキャパシティーの半分に制限したりとベストな形でできない状況が続いています。
Jing:じゃあコロナ禍においてはどういう活動をしているのですか?創作活動がメインになりますか?
下岡:僕はぜんぜん音楽が作れなかったから、地元の友人のりんご園を手伝ってました(笑)。
Jing:機会があれば、そのりんご食べてみたいです(笑)。
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