台湾ロックシーンを世界へ! 拍謝少年インタビュー

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台湾南部出身、維尼(ウェニー)・薑薑(ジャンジャン)・宗翰(ゾンハン)が結成したスリーピースオルタナロックバンド「拍謝少年」(読み:パイシェイ.シャウネン,英文表記:Sorry Youth)。彼らは日本のロックフェスでもライブ出演を果たしている。2015年の「SUMMER SONIC TOKYO」、今年の「森、道、市場 2019」、「島フェス」に出演。拍謝少年は台湾独自のロックシーンを掴み出し、海を越えて熱唱し始めた。その瞬間、胸躍るギターサウンドと共に、熱帯の街の風景が幻燈のように流れてきた。

結成から14年が経った。台湾のインディーズカルチャーにおいて、拍謝少年はまさに我々の精神的支柱と言っても過言ではない。現在も各方面から支持を集め、台湾を代表するロックバンドとして活躍している。

台湾の伝統楽器『南北管』を融合させた「契囝」や、最高に盛り上がる定番曲「暗流」。サウンドに故郷台湾への想いを注ぎ込み、少年たちは視野を広げながら果敢に世界へ飛び出した。「台湾の文化とロックシーンを世界へ伝える!」という野望を胸に、香港やバンクーバー、ソウルなどの都市を巡ってきた彼らにその熱い想いについて訊く。

ー今年も相変わらずライブスケジュールがタイトですね。海外でのライブ活動が注目されていますが、日本、香港、カナダ、韓国を訪れたことには、何か特別な理由があったのですか?

薑薑(Ba.):カナダが最初でした。そこから出演依頼が来て、そのあとは5月の「森、道、市場」かな。香港ライブも結構前にオファーが来ていたけど、デモが始まったばかりの時期だったので予定より出演が遅くなりました。振り返ってみれば、実にいろいろなご縁があって海外へ行くことができました。

宗翰(Dr.):本当にタイミングが良かった。海外ライブのおかげでたくさんの友達できました。カナダでは『台湾文化フェス』というイベントに出演したんです。イベントのテーマは台湾だけど、文化交流ユニット『アジアとの会話』にも参加して、アジア各地の文化にも触れることができました。新鮮な体験でした。

薑薑(Ba.):今までの海外公演はオファーを頂いて出演することが多く、自分たちからツアーなどの形で行った事がないんです。いつか行けたらいいな。と考えています。

維尼(Gt.):海外へ行っても、現地の台湾人が手伝いに来てくれて、みんなの愛を感じました。

ー最近、「土產歐巴」(ローカルオッパ)と呼ばれているそうですね。

薑薑(Ba.):台中市政府が主催する野外フェスティバル「搖滾台中 Rock In Taichung」のオフィシャルSNSで「土產歐巴」(ハングルで「地元のお兄さん」という意味)と呼ばれ始めたんです。それが面白かったのでそのまま使い続けました。

宗翰(Dr.):ソウルでライブした時も、薑薑がよく韓国人に間違えられたしね。

薑薑(Ba.):皆で一緒にご飯屋さんに行って、注文する時に全員英語で話しかけられてるのに僕だけハングルで聞かれました。何故だろう。わからない(笑)

薑薑(ジャンジャン)

ー今年の海外ライブで一番印象深かったのは?

薑薑(Ba.):ソウルライブの最終回は盛り上がりました。サーキットフェスでライブ会場は小さめのライブバーだったんですが、海外ライブで初めて物販が完売したので、びっくりしました。韓国は僕らにとって初めての出演だったけど、お客さんの反応もよかったし、今でもインスタで韓国語のメッセージをもらったりしてます。台湾人に負けない親切さを感じます。

宗翰(Dr.):カナダで取材を受けたことが強く印象に残っています。台湾のバンドとしては、僕たちが初めて、現地のフリーマガジン「The Georgia Straight 」の表紙を飾りました。

台湾ではライブのために来台した他国のアーティストが地方局のニュースになるとか、雑誌の表紙になるという事は、やはり想像しにくいですよね。僕らもまだ世界中で大人気のバンドではないのに、そういう対応をしてくれたのが嬉しかった。今回の体験から、カナダでは多様性を重視しているという事が実感できました。アーティストの文化的なバッググラウンドに敬意を払う国だと思います。

「The Georgia Straight」表紙に登場した拍謝少年(Sorry Youth)

維尼(Gt.):小豆島の「島フェス」で本番中、ちょっとしたトラブルが起きて演奏時間が延長してしまったんです。次の出番はHusking Beeさん。尊敬する大先輩をお待たせしてしまって、本当に申し訳ないと思い、焦りました。

Husking Beeさんの出番が終わったら、すぐ謝りに行ったんですけど全く気にした様子も見ぜず、逆に励ましの言葉をたくさん頂きました(汗)日本や台湾の音楽事情の話もできて嬉しかったです。Husking Beeさんも僕らと一緒で、台湾の火球祭(Fire Ball Fest)に出演が決定しているので、その時またお会いして、色々お話したいです。。小豆島周辺の景色も綺麗でした。台湾でもこういう感じの野外フェスが増えてきたらいいなと思います。

ー海外ライブに欠かせないアイテムがありますか?

薑薑(Ba.):養氣人蔘(台湾で有名なチキンエキス)は大事。疲れ切った時、一気に飲めば、もう3時間、持ちこたえられるようになります。

宗翰(Dr.):たまに手汗が出るから、ライブに影響しないようにハンドジェルを使ってます。

薑薑(Ba.):キレイ好きだなあ。

維尼(Gt.):ウエストバッグは役立ちます。貴重品や忘れやすいものを入れるんです。セットリストとか。僕らは先乗り込みのエンジニアがいませんので、うっかり忘れものもできません。全部自分達でしっかり管理しています。

宗翰(ゾンハン)

ー音楽が言葉の壁を越える事は観客の反応からわかると思いますが、台湾語ロックを特徴とする拍謝少年は、今までの海外出演で現地語の挨拶などを準備した事がありますか?

薑薑(Ba.):挨拶は大事だと思って勉強しました。英語が通じない国の場合は、現地の言葉で挨拶できれば、お互いに嬉しくなるでしょう。

宗翰(Dr.):日本語は頑張った。料理の名前はほとんど覚えました。うどんが美味しいとか(笑)

維尼(Gt.):日本でも、僕らの歌詞に振り仮名をつけて勉強して、ライブの時シングアロングの部分も歌ってくれるファンがいました。海外のファンが僕たちの音楽に影響を受けて台湾語を習い始めたのを不思議だと思いながら、そういう影響力を与え続けるために頑張りたくなりました。

薑薑(Ba.):カナダでのエピソードなんですが、ライブが終わってから地元の男性に声をかけられました。その方は中華系に見えたけど、多分地元の人だと思います。流暢な英語で僕らのライブから感じたことや、バンド名から想像した僕らの由来を詳しく語ってくれたんです。台湾語はわからないはずなんだけど、とても独特な解釈だった。彼らの文化圏から見ると、僕らの音楽も違う形に見えることに感動しました。

維尼(ウェイニー)

ーすべての曲を『拍謝少年』名義で発表していますね。実際に曲を作るときは、どのように作業分担をしていますか?

薑薑(Ba.):スタジオで集まってジャムしながら作曲します。ルールを決めずにそのまま書き始めるとか。コーラスの部分は宗翰が書く場合が多いですが。

維尼(Gt.):自分の楽器から発想したり、途中で何か良さそうな試みがあったらやってみるとか。演奏しつつ曲の構成を組んで、好きな音を入れて組み合わせたりもします。

薑薑(Ba.):それぞれ作曲したフレーズに歌詞を入れて、大体、9割くらいは自分が作った部分を自分で歌うことになります。特に決めてないからレコーディングの順番も毎回違うんですが、3人が持つ曲に対するイメージや伝えたい想いが共感できるようになるまで曲は完成しません。その中で、「暗流」の歌詞は3人がそれぞれの視点から書いた曲だから、他の曲と比べると少し特殊ですね。

維尼(Gt.):「骨力走傱」という曲もそうだね。この2曲はアルバムの中で最後に出来た曲だから、歌詞もできるだけ3人のイメージをそれぞれに表現できるようにしました。

薑薑(Ba.):Aメロができて、入れたい音どんどん入れ込んでいったら、長くなり過ぎる事もありました。拍謝少年はインストバンドではないけど、作品にはインスト曲も10分くらい長さの曲もあります。結構自由です(笑)

ー年末まで残り2ヵ月あまり、「兄弟沒夢不應該」リリースから2年が経ちました。バンドが目指す次のステップと、今後の目標を教えて下さい。

宗翰(Dr.):今年は、色々な紛争が起きて世界が不安定になりました。各地で起きる事件に対して、何をしても現状を変えられないという考えが浮かんでしまって、そんな時は常に無力感が溢れます。巨大な独裁政権の前に立つと国民は小さく見えるかもしれません。でも、諦めたら何も残らない。「希望を捨てちゃいけない。諦めたらそこで試合終了だ。」と安西先生が言っていました。

維尼(Gt.):科学哲学家トーマス.コーンという人がパラダイムシフトという理論を発表しました。パラダイムというのは「価値観」や「産業形態」という意味があって、そのパラダイムは常に変化し続ける、という考え方なんです。世界情勢や音楽産業がどの方向を目指して発展していくのか、誰にも予測できません。ただ僕たちは、時代の大きな移り変わりをはっきりと肌で感じています。

僕らにとって2019年は音楽を本職にした初めての年です。Mega Port Festivalの主催から最近の海外公演を経て、より自由になり、創作も思い切ってできるようになりました。それは僕ら自身のパラダイムが変わったからだと思いつつ、次の作品のことを考え始めています。海外公演を終え、ようやく旅が終わったので、次の動きも決まりました。ワンマンライブを企画しています。これが実現すれば、また、新たな一歩を踏み出すことができると思います。

薑薑(Ba.):「兄弟沒夢不應該」をリリースしてからライブオファーが殺到してスケジュールが全部埋まってしまいました。メガポートで安溥(Anpu)さんと共演してからは、拍謝少年の音楽を聴き込んで、僕たちが描く世界に共感してライブに来てくれるお客さんが増えてきました。そういうファンのためにも、自分たちの心の変化と誠実に向き合い、真摯な姿勢で次のアルバムを作りたいです。そして、次のワンマンライブは、この2年間、僕たちが世界で学び、積み重ねてきたものを全力で出しきれる、最高のライブにします。

宗翰(Dr.):2nd アルバムからクロスオーバーできたらと考えています。イベント企画の経験を持ってる僕らは、自分のワンマンライブにジャンルの違うアート要素を入れてみたいという思いがあります。それと、今年は音楽イベントが一気に減少したのを見て、何かを作りたい気持ちも強くなってきました。海外にもバンドが主催するフェスがあるので、今回のワンマンを新しいスタイルとして提案したいですね。——小さなライブハウスから飛び出してみたいんです。

維尼(Gt.):マーケットをメインとする「森、道、市場」や大自然を味わえる「島フェス」。僕らが日本の野外フェスから受けた影響は大きくて、野外でも何かできないかと考えています。台湾の音楽シーンを変えるのはすぐにできることじゃないけど、僕らが変えようとすれば、それが新しい始まりになります。

薑薑(Ba.):さまざまなフェスを体験できたのは楽しかったです。あとはアルバムかな。おおまかな構想はあるけど、一枚に仕上げるには時間が必要です。

宗翰(Dr.):そもそも誰かひとりが主導して創作するバンドじゃないので、どうやったら良い作品を作り続けることができるのか、実際にスタジオに入って、色々試してみないとわからないんですよね。ワンマンライブのタイトルはもう決まってます。そこから次のアルバムのコンセプトも見えてくると思うので、皆さん、どうか楽しみにしていて下さい。

 

取材.テキスト:KEI
撮影:Jeanie Tsai
校正:黒田羽衣子

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